外国人技能実習生の派遣は禁止?外国人派遣、特定技能外国人との違いを解説
外国人技能実習生という言葉を耳にすることがあります。外国人が日本に来て働くというイメージを持たれる人が多いかもしれませんが、その制度や目的により雇用形態が変わってくることをご存知でしょうか。
本記事では「外国人技能実習生の派遣」についてわかりやすくご紹介します。
目次
- 技能実習生の受け入れ方法
- 企業単独型
- 団体管理型
- 業務内容に合った在留資格があるかを確認する
- 外国人雇用状況の届出が出されているか確認する
- 労働者派遣契約の内容を確認する
技能実習生の派遣は禁止されている
技能実習生の派遣は禁止されています。禁止の理由は、技能実習生制度ができた目的を知れば明らかです。
技能実習生制度とは、日本で習得した技術、知識を発展途上地域に伝えて広めていく「国際貢献」を目的として作られた制度です。実際、技能実習法第3条2項では「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。」と制定されています。
この意味を少しわかりやすく説明すると、技能実習生はあくまでも人材育成、人材づくりを目的としており、企業の人手不足を補うために派遣されることはあってはならないという意味です。派遣と似たかたちで、業務委託や請負がありますが、これらも同じく禁止されています。
技能実習生とは
外国人技能実習制度は、発展途上地域の発展のためにあります。そのための技術や知識を学ぶ実習生のことを「技能実習生」といいます。
実習生といっても、雇用形態は一般的な日本人労働者と同じです。基本的には、日本に来た(入国)直度1ヶ月の講習期間を除けば、日本労働者と同じ「労働基準法」が適応され、雇用形態は正社員として雇用され、有給休暇の取得、社会保険、労働保険の加入も行われます。
技能実習生の受け入れ方法
外国人技能実習生を受け入れる方法は以下の2つです。
- 企業単独型
- 団体管理型
では、ひとつずつ説明していきます。
企業単独型
企業単独型とは、その名前のとおり、企業が直接(単独)的に海外の支店や関連会社から職員を受け入れて技能実習を行うかたちです。
具体的な事例を紹介すると、いすゞ自動車が2018年12月からフィリピン子会社の自動車整備士育成学校より2人の社員を技能実習生として受け入れています。
このように、比較的大きな企業が、子会社や関連会社から技能実習生を受け入れる方法が企業単独型と呼ばれています。
参照元:日刊自動車新聞電子版「いすゞ、外国人技能実習 企業単独型で受け入れ拡大」
団体管理型
団体管理型とは「監理団体」が技能実習生を受け入れたのちに、企業などで技能実習を行う方法です。監理団体とは、協同組合や商工会議所などの非営利団体のことを指します。団体管理型で技能実習を行う場合には、管理団体に組合員として加入することが必要です。
基本的には監理団体主導で進んでいくため、面倒な書類の作成や煩雑な育成計画などを考える手間は省かれますがコストがかかってしまうというデメリットはあります。
しかし、大きな企業などではない場合では企業単独型で技能実習を行うことは難しいため、団体管理型で技能実習生を受け入れる方法をとる企業が多いことが現状です。
技能実習生と外国人派遣の違い
外国人派遣とは、その名前のとおり外国人を派遣で受け入れることです。外国人でも在留資格(就労ビザ)があれば派遣として受け入れることが可能で、日本人派遣と特に変わりはありません。
技能実習生と外国人派遣の具体的な違いはいくつかありますが、もっとも大きな違いは目的です。
技能実習生は、発展途上地域の発展のための人材育成を目的としており、人材不足のための雇用は認められていません。ただし、外国人派遣には、このような条件はないため人材不足等で派遣として受け入れることができます。
さまざまな制限がない分、外国人派遣に大きな魅力を感じるかもしれませんが、派遣契約は1年足らずで終了することが多いのが現状です。
企業側からすれば、1年かけて仕事を教えたにもかからず継続して働いて貰えず、次の人材を探すために更なるコストや労力がかかってしまうという負のサイクルに陥ってしまうことすらあります。どちらも、メリット&デメリットがあるため、現在の企業が求めているニーズにあった方法をとることが大切です。
技能実習生と特定技能外国人の違い
技能実習生と似た言葉で「特定技能外国人」があります。両者は何が違うのか、わかりやすく比較表を作成してみましたのでご参照ください。
技能実習生 | 特定技能外国人(1号の場合) | |
---|---|---|
制度の目的人材育成人手不足解消 | ||
在留資格特定技能へ移行後、永住権の取得が可能特定技能1号⇒2号⇒永住権の取得が可能 | ||
在留期間最長5年通算5年 | ||
就業内容農業・建設・繊維衣服など86分野介護・建設・農業など12分野 | ||
転職の可否転職不可
※2号から3号へ移行時のみ可 転職可能 |
||
家族滞在の可否不可不可
※2号のみ母国の配偶者ならびに子ども可 |
||
受け入れ人数の制限制限あり制限なし | ||
受け入れ方法監理団体からのみ制限なし |
技能実習生と特定技能外国人では、そもそもの目的が違います。就業内容には大きな差があり、圧倒的に技能実習生の方が多くなっていますが、なかには特定技能外国人にしか設けられていない分野もあるのです。
もちろん、どちらにもメリットとデメリットはあります。技能実習のメリットは監理団体の力により比較的人材を見つけやすいこと、デメリットはコストが高いことです。一方で特定技能外国人のメリットは受け入れ人数の制限がないこと、コストを抑えられること。またデメリットは、早期退職や人材確保が難しいことが挙げられます。
派遣で外国人を受け入れるには
外国人を派遣で受け入れる場合、一般的な方法は一般募集によって労働者を募る方法と、派遣会社を通じて外国人派遣労働者を受け入れる方法の2つがあります。
とくに、派遣の受け入れの場合は派遣会社を通じて外国人派遣労働者を受け入れるケースがスタンダードです。日本人派遣労働者と同じく、外国人派遣労働者が契約を結ぶのは派遣会社となり、企業は派遣会社と派遣契約を結ぶことになります。
在留資格は厚生労働省のホームページ内で以下のように記載されています。
1)在留資格に定められた範囲で就労が認められる在留資格18種類
外交/公用/教授/芸術/宗教/報道/投資・経営/法律・会計業務/医療/研究/教育/技術/人文知識・国際業務/企業内転勤/興行/技能/技能実習/特定活動(ワーキングホリデー、EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士、ポイント制等)
(2) 原則として就労が認められない在留資格5種類
文化活動/短期滞在/留学/研修/家族滞在
(3) 就労活動に制限がない在留資格 4種類
永住者/日本人の配偶者等/永住者の配偶者等/定住者
派遣で外国人を受け入れる際の注意点
派遣で外国人を受け入れる際は以下3つのことに注意をする必要があります。
- 業務に合った在籍資格があるかを確認する
- 外国人雇用状況の届出が出されているかを確認する
- 労働者派遣契約の内容を確認する
ひとつずつ説明をしていきます。
業務内容に合った在留資格があるかを確認する
外国人労働者を受け入れるには、仕事内容が在留資格で許可されたものかを確認する必要があります。在留資格は全部で29種類あり、それぞれで就労できる仕事の内容が異なります。
もし、在留資格の対象ではない仕事に従事させていることが判明した場合、不法就労助長罪として3年以下の懲役か、300万円以上の罰金が課せられることになります。派遣会社を通じて外国人派遣労働者を受け入れる場合は、これらの確認は基本的には派遣会社が行います。もちろん企業側も再確認を含めて派遣会社に確認を行うことや、実績や信頼のある派遣会社を選定することなどの対策を講じる必要はあります。
外国人雇用状況の届出が出されているか確認する
国は各企業で働いている外国人を把握する必要があります。そのため、各企業は「外国人雇用状況の届出」を提出することが義務付けられています。
提出は、オンライン提出と所轄のハローワークへの届出のどちらでも構いません。もし、外国人雇用状況の届出を忘れていたり、怠っていたりしたことが発覚した場合、事業主に罰金刑が課せられることがあるため注意が必要です。
労働者派遣契約の内容を確認する
派遣会社から人材を受け入れる場合、企業と派遣会社との間で「労働者派遣契約」が結ばれます。一般的に労働者派遣契約には2種類があり「基本契約」と「個別契約」があります。
基本契約とは、企業と派遣会社の間で結ばれる基本的な共通事項をまとめた契約のことです。一方で、個別契約は労働者によって個別に定められた契約のことで、個別契約には契約書の保管が義務付けられています。
これら契約で定められた内容に違反した場合、30万円以下の罰金が課せられる場合があるため注意が必要です。例えば、3年を超えて同じ派遣先に継続して従事させた場合や、就業条件を労働者に説明しなかった場合などが罰則規定の対象となります。
まとめ
外国人技能実習生の派遣は禁止です。企業は、各制度の目的や仕組みを把握したうえで、どの制度と雇用形態を利用して外国人労働者を受け入れることが双方の利益になるかを検討しなければなりません。
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