派遣法の派遣期間制限(3年ルール)とは?例外や抵触日の確認方法について解説
派遣労働者の受け入れを検討している場合には、派遣期間制限について理解しておく必要があります。派遣期間制限には個人単位と事業所単位の2種類があり、違いがわからないという方もいるでしょう。
この記事では派遣期間制限についてわかりやすく解説していきます。例外や抵触日の確認方法についても紹介するため、派遣労働者の受け入れを検討している方や派遣期間制限の理解を深めたい方はぜひ参考にしてください。
目次
- 派遣期間制限(3年ルール)の概要
- 派遣期間制限(3年ルール)の対象者
- 5年ルールとの違い
- 個人単位の派遣期間制限
- 事業所単位の派遣期間制限
- 派遣元企業と無期雇用契約を結んでいる派遣労働者
- 60歳以上の派遣労働者
- 労働日数が限定されている労働者
- 一定の期間で完了するプロジェクトを行っている労働者
- 産前産後休業・育児休業、介護休業取得者の代わりに働いている労働者
労働者派遣法の派遣期間制限(3年ルール)とは
労働者派遣法の派遣期間制限(3年ルール)は、労働者派遣法が定める派遣労働者の受入期間の制限を指します。また、労働者が無期雇用への変更を申込みできる5年ルールも存在しますが、3年ルールとはなにが違うのでしょうか。
派遣期間制限の概要と対象者、5年ルールとの違いについて、以下で解説します。
なお、労働者派遣契約を詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
「労働者派遣契約とは?流れや契約書のひな形、業務委託との違いを解説」
派遣期間制限(3年ルール)の概要
派遣期間制限は、派遣労働者が同一の職場で働ける期間を原則3年以内とする制限で、一般に「3年ルール」と呼ばれています。2015年9月に改正された労働者派遣法にて、新たに定められました。
同一の職場で働ける期間を原則3年以内とし、3年を超える場合は、派遣先企業へ派遣労働者の直接雇用を促すなどの対応が求められます。長く働いて欲しい人材の直接雇用を促進できれば派遣労働者の雇用状態が安定し、キャリアアップにつながるため期間制限が設けられました。
派遣期間制限(3年ルール)の対象者
対象者は2015年9月30日以降、派遣元企業と有期雇用派遣契約を締結・更新した派遣労働者です。有期雇用派遣とは、一定の契約期間を定めて派遣される雇用形態を指します。
一部の例外を除く、さまざまな業務において事業所単位・個人単位で派遣期間制限が適用対象です。
5年ルールとの違い
派遣期間制限(3年ルール)と似た制度に「5年ルール」が存在します。5年ルールは、同一の職場で勤続年数5年を超える労働者が希望する場合、無期雇用への契約変更を申込める制度です。
3年ルールは派遣労働者が対象ですが、5年ルールは有期雇用契約で働くさまざまな労働者が対象となる点が異なります。
派遣期間制限(3年ルール)には2つの期間制限がある
労働者派遣法が定める派遣期間制限(3年ルール)には、2つの期間制限があります。
- 個人単位の派遣期間制限
- 事業所単位の派遣期間制限
なお、派遣期間の制限を過ぎた最初の日を抵触日といいます。
2つの期間制限について、以下で詳しく解説します。
個人単位の派遣期間制限
個人単位の派遣期間制限とは、派遣先の同一の組織単位で同一の派遣労働者を受け入れることができる期間で、原則3年が限度です。ここでいう組織単位には、同事業所内の部署が該当します。たとえば、派遣労働者Aさんが2023年4月1日から自社のある部署で派遣社員を受け入れた場合、2026年3月31日まで同じ部署で働いてもらえるといったものです。
なお、期間制限の通算期間がリセットされる空白期間(クーリング期間)が定められています。クーリング期間が3ヵ月超(3ヵ月と1日以上)ある場合は、同一の組織単位で同一の派遣労働者を新たに3年間受け入れることが可能です。
事業所単位の派遣期間制限
事業所単位の派遣期間制限とは、同一の派遣先企業で派遣労働者を受け入れられる期間を原則3年までと定めたものです。たとえば、派遣労働者Aさんが2023年4月1日からとある企業で働き始めた場合、Aさんは2026年3月31日まで働けます。2023年9月1日に派遣会社から別の派遣労働者Bさんが派遣された場合、Bさんの働ける期間も2026年3月31日までです。
ただし、派遣先企業が、派遣労働者の受入開始から3年経過するときまでに事業所の過半数労働組合から意見聴取した場合には、更に最長3年間労働者派遣を受け入れることができます(その後更に3年経過した場合も同様)。
また、個人単位同様、事業所単位の派遣期間制限にもクーリング期間が定められており、クーリング期間が3ヵ月超(3ヵ月と1日以上)ある場合は、同一の事業所で新たに3年間、労働者派遣を受け入れることが可能です。
派遣期間制限(3年ルール)の例外
派遣労働者の属性や業務内容によって、派遣期間制限の例外となる場合があります。以下のいずれかに該当する場合は、派遣期間の制限を受けません。
- 派遣元企業と無期雇用契約を結んでいる派遣労働者
- 60歳以上の派遣労働者
- 労働日数が限定されている労働者
- 一定の期間で完了するプロジェクトを行っている労働者
- 産前産後休業・育児休業、介護休業取得者の代わりに働いている労働者
以下で例外となる労働者について解説します。
派遣元企業と無期雇用契約を結んでいる派遣労働者
派遣元企業と無期雇用契約を締結しているなら、派遣先で働く雇用形態であっても派遣期間制限の対象からは外れます。
無期雇用契約とは、期間の定めがない労働契約です。派遣元企業と無期雇用契約を締結している労働者は期間の定めなく就業しており、安定した雇用状態にあるため派遣期間制限の対象ではありません。
60歳以上の派遣労働者
就業開始日または就業開始日から3年が経過した時点で60歳上の派遣労働者は、派遣期間制限の対象外です。就業開始日は60歳未満であっても、3年経過した時点で60歳以上となる場合は、派遣期間制限の対象者から外れます。
たとえば就業開始日の時点では59歳の有期派遣労働者は、3年経過時点で62歳となり、派遣期間制限は適用されません。
労働日数が限定されている労働者
労働日数が限定されている労働者も派遣期間制限が適用されず、具体的には有期雇用派遣契約で働く労働者のうち、以下の条件にあてはまるケースを指します。
- 1ヵ月間に派遣先で勤務する日数が、所定の半分以下
- 1ヵ月間の勤務日数が10日以下
たとえば、同じ派遣先で働く通常の労働者は1ヵ月に22日勤務の場合、1ヵ月の勤務日数が10日間のみの派遣労働者は対象になりません。
一定の期間で完了するプロジェクトを行っている労働者
派遣期間が3年を超える場合でも、期間が明確に定められたプロジェクトのために働く派遣労働者は、派遣期間制限が適用されません。
たとえば、2024年4月1日から2029年3月31日と決まっているプロジェクトに参画する場合は、3年の制限を超えて終了時点まで就業可能です。
ただし、事業の開始、縮小または廃止などのための業務に限られる点には注意が必要です。
産前産後休業・育児休業、介護休業取得者の代わりに働いている労働者
産前産後休業・育児休業、介護休業を取得する従業員の代替人員として働く派遣労働者も、派遣期間制限の対象外です。
たとえば、産前産後休業と続けて育児休業を取得し、3年6ヵ月間休む従業員の代わりに働く派遣労働者は、休んでいる従業員が復帰するまで就業できます。
抵触日の確認方法
派遣先企業には派遣元企業へ抵触日を通知する義務があるため、派遣元企業へ送った書面や電子メールの記載内容を見れば確認ができます。とはいえ、事業所単位ないし個人単位において受け入れ日と抵触日を常に確認できるよう、適切に情報を管理しておきましょう。一方、派遣労働者は、就業条件明示書で抵触日を確認できます。就業条件明示書とは、派遣労働者が派遣会社と契約を結ぶ際に提示される書面です。就業条件証明書には抵触日のほか、就業時間や就業場所、賃金などについて記載されています。
抵触日を迎えた場合の働き方
抵触日を迎えた場合の派遣労働者の働き方には、以下のようなものがあります。
- 事業所単位の受け入れ期間が延長されたうえで、同一の事業所の違う部署で派遣就業する
- 派遣先企業と直接雇用の契約を結ぶ
- 派遣元企業と無期雇用の派遣労働者として雇用契約を結び、同じ派遣先部署(組織単位)で派遣就業する
- 他の派遣先で派遣就業する
- 派遣労働者として働くことをやめる
- クーリング期間の経過後に同一の事業者で働く
派遣先企業で引き続き働きたい場合の選択肢には、「同一の事業者の違う部署に派遣してもらう」と「派遣先企業と直接雇用の契約を結ぶ」、「派遣元企業と無期雇用派遣契約を結ぶ」があります。派遣元企業と無期雇用契約を結ぶと、派遣期間制限は適用されません。いずれの働き方においても、派遣労働者の希望だけで決定されるものではありませんが、派遣元企業としては、派遣労働者の雇用安定措置を図る必要があります。
派遣期間制限(3年ルール)のメリット
派遣期間制限は、派遣労働者にとって働き方の選択肢を増やせるというメリットがあります。
派遣期間制限が適用される場合には、派遣労働者は3年を超えて同一の組織で働けません。そのため派遣元企業が雇用安定措置を図り、派遣先企業の変更などの対応を取ります。
派遣期間制限によって派遣労働者が働き先を他社に変更してしまうと、3年かけて育成した人材を失うこととなります。同じスキルを持つ人材を確保する場合、採用コストや育成コストがかかるため、コストを削減するために派遣先企業は直接雇用の契約を結ぼうとする場合があるのです。これも雇用安定措置のひとつです。
つまり、派遣期間制限で働く期間を制限することにより、雇用安定措置として直接雇用契約や無期雇用契約、他部署への異動などの選択肢が増えます。
派遣期間制限(3年ルール)のデメリット
派遣元企業が雇用安定措置を図る必要があるために、派遣期間制限には派遣労働者にとってメリットのある制度であるものの、デメリットも存在しています。
派遣労働者が「3年を経過しても同じ派遣先の同じ部署で働きたい」と考えていても、直接雇用契約や無期雇用契約が結ばれなければ、他の派遣先を探したり、他の部署へ異動したりしなければなりません。また、派遣労働者自身が働き始めてから3年を経過していなくても、他の派遣労働者が働き始めて3年を経過するタイミングでご自身の派遣期間も終了してしまう場合があります。
まとめ
派遣期間制限には、個人単位と事業所単位の2種類があります。派遣労働者を受け入れる場合には避けては通れない制度であるため、派遣労働者の活用を検討している事業者は必ずどのような制度なのか理解しておきましょう。
派遣先の企業には、派遣労働者を受け入れた際に派遣元の企業へ抵触日を通知する義務があります。抵触日がわからなくなることがないよう、管理を徹底しましょう。
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