企業の派遣社員採用の流れとは?注意点や採用のメリット・デメリットも解説
派遣社員を募集してから採用に至るまでは、派遣会社によるマッチングや顔合わせなどがおこなわれるのが一般的です。
しかし、派遣社員の採用に関する具体的な内容を把握できていない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、派遣社員を採用する際の流れや活用のメリット・デメリット、注意点を解説します。派遣社員の受け入れを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
- 1.ヒアリングの実施
- 2.派遣社員のマッチング
- 4.契約締結
- 5.派遣社員の勤務開始
- 契約書の締結
- 派遣先管理台帳の作成
- 採用の手間が省ける
- 採用コストの削減
- 即戦力になる人材の確保
- 派遣期間が制限されている
- 社内ルールを説明する必要がある
- 業務内容が制限されている
- 派遣先責任者を確認する
- 派遣社員の受け入れには期間制限がある
- 派遣社員の受け入れ可能期間制限がない場合
- 派遣禁止業務がある
人材派遣とは
人材派遣とは、派遣会社に雇用された人材を企業に派遣し、必要な業務をおこなってもらうサービスのことです。人材不足への早期対応や採用活動の簡略化といった観点から、人材派遣を利用する企業はたくさん存在します。
人材派遣のしくみ
派遣社員の雇用主は派遣会社であり、派遣先企業は派遣社員に業務をおこなってもらうための指揮命令を取る立場にあるのが人材派遣の基本的なしくみです。
派遣先企業と派遣社員は雇用契約を締結していないため、社会保険等の手続きや有給休暇への対応、賃金の支給などは派遣会社によっておこなわれます。
企業が派遣社員を採用するまでの流れ
企業が派遣社員を採用するまでには、ヒアリングやマッチング、顔合わせといった過程があります。一般的な流れを確認し、派遣社員を受け入れるための参考にしてください。
1.ヒアリングの実施
まずは、派遣会社にてヒアリングがおこなわれます。「どのようなスキルを持った人を受け入れたいか」「任せる予定の業務内容はなにか」といった希望条件を伝えます。そのほかにも、派遣社員応募に至った経緯や就業してもらいたい期間などの詳細まで伝えておくのがポイントです。
派遣会社の担当者としっかり意思疎通が取れていれば、企業の求める人材を紹介してもらいやすくなります。その後の流れもスムーズに進むようになるため、ヒアリングでは細かな条件をリストアップしておくと良いでしょう。
2.派遣社員のマッチング
ヒアリング内容をベースに派遣会社が条件に見合う人材を選び、派遣先企業への紹介(マッチング)をおこないます。ここで注意しておきたいのが、派遣先企業は派遣社員を選別する権利がないということです。
労働者派遣法では、派遣先企業が面接や書類などで派遣社員の選考をおこなうことを禁じています。これは、容姿や年齢など能力以外の部分で派遣社員が選別され、均等な雇用機会が奪われることを防ぐ目的で定められています。
条件に合致する人材の選別は派遣会社に任せ、派遣先企業はマッチング結果の確認のみをおこないます。
3.顔合わせ・職場見学の実施(h3)
マッチング後、派遣社員の希望があれば派遣社員と派遣会社の営業担当、派遣先企業の人事担当で顔合わせをおこないます。派遣社員が就業予定の職場を見学し、業務内容や労働条件などに認識の齟齬がないか確認するのが目的です。
顔合わせでは、派遣社員の自己紹介や派遣先企業による業務内容の説明などがおこなわれます。顔合わせはあくまでも派遣会社と派遣先企業の認識のすり合わせであるため、選考目的の質問や個人情報に関連した質問はおこなわれません。
職場見学の時間は、およそ30分〜1時間で終わるのが一般的です。
4.契約締結
正式に就業してもらうことが決まったら、派遣会社と契約を締結します。この契約は、派遣会社から人材派遣を受けることを意味しているのが特徴です。
なお、派遣社員が顔合わせを希望しなかった場合は、派遣会社が派遣社員と面接をして雇用を決定した際に、派遣先企業と派遣会社で派遣契約を締結することになります。
派遣先企業と派遣社員の間で雇用契約が交わされるわけではないため、混同しないようにしましょう。
5.派遣社員の勤務開始
勤務開始前には、派遣社員を受け入れることを社内に知らせ、スムーズに仕事に入るための体制を整えておきます。
業務に必要なネットワーク環境やパソコン、備品類の準備に加え、担当してもらう業務のマニュアルや前任者からの引き継ぎ資料などを用意しましょう。
しっかりと準備を整えて、派遣社員に気持ちよく勤務を開始してもらうのが大切です。
派遣社員採用の流れにおける注意点
派遣社員を採用する際は、契約書の締結と派遣先管理台帳の作成に注意しましょう。以下で、詳しく解説します。
契約書の締結
初めて派遣社員を受け入れる際は「労働者派遣基本契約」の締結が必要です。労働者派遣基本契約では、派遣会社が派遣先企業へ労働者を派遣する旨の契約を結びます。
そして、労働者派遣基本契約の締結後、「労働者派遣契約(個別契約)」を締結します。就業条件や業務内容などの詳細に関する契約で、労働者の派遣があるたびに必要です。これは、労働者派遣法で定められています。
派遣先管理台帳の作成
派遣先企業は事業所ごとの派遣先管理台帳を作成する義務があると、労働者派遣法で定められています。
派遣先管理台帳には、以下の記載事項が必要です。
- 派遣労働者の氏名
- 派遣元事業主の氏名または名称
- 派遣元事業所の名称・事業所の所在地
- 無期雇用派遣労働者か有期雇用派遣労働者かの別
- 派遣就業した日
- 派遣就業をした日ごとの始業・終業時刻ならびに休憩時間
- 従事した業務の種類
- 派遣労働者が派遣労働に従事した事業所名称と派遣就業をした場所ならびに組織名
- 労働者から申し出を受けた苦情の処理に関する事項
- 派遣元責任者と派遣先責任者に関する事項
- 派遣労働者が60歳以上の者であるか否かの別
- 派遣労働者に係る健康保険、厚生年金保険、雇用保険の被保険者資格取得届の提出の有無および提出がない場合の具体的な理由
- 教育訓練をおこなった日時や内容
- 紹介予定派遣に関する事項(紹介予定派遣の場合のみ)
- 派遣可能期間の制限を受けない業務に係る労働派遣に関する事項(該当する業務である場合のみ)
- 協定対象派遣労働者であるか否かの別
- 派遣労働者が従事する業務に関する責任の程度
なお、上記の記載事項のうち、以下の項目は派遣会社に対して1ヵ月に1回以上、一定の期間を定めて通知しなければなりません。
- 派遣労働者の氏名
- 派遣就業した日
- 派遣就業をした日ごとの始業・終業時刻ならびに休憩時間
- 従事した業務の種類
- 派遣労働者が派遣労働に従事した事業所名称と派遣就業をした場所ならびに組織名
- 派遣労働者が従事する業務に関する責任の程度
契約書の締結や派遣先管理台帳の作成を怠ると労働者派遣法違反になるため、定められた措置をしっかりおこない、派遣社員を受け入れましょう。
企業が派遣を活用するメリット
派遣社員を活用するメリットは、おもに以下の3点です。
- 採用の手間が省ける
- 採用コストの削減
- 即戦力になる人材の確保
業務に必要なスキルを備えた人物が派遣されれば、採用の手間やコストを減らして、即戦力人材を得られるでしょう。
採用の手間が省ける
求めるスキルや経験などを伝えれば、派遣会社が条件に適した人材を派遣してくれるため、自社で採用活動する手間を省けます。
繁忙期のみの増員や専門スキルを有する人材が必要な際にも、素早い対応が可能です。
採用コストの削減
派遣社員は自社で雇用する社員とは異なり、社会保険をはじめとした労務関係の処理は派遣会社がおこないます。
社会保険料の負担や人材管理にかける業務コストを削減できる点も、派遣社員を活用するメリットです。
即戦力になる人材の確保
採用の手間とコストを削減できるほか、即戦力人材を得られる点でも派遣社員の活用にはメリットがあります。
社員がスキルを習得するよう指導・育成しなくても、最初から求めるスキルを持った人物を受け入れることが可能です。就労してすぐに活躍でき、即戦力としての期待ができるでしょう。
企業が派遣を活用するデメリット
派遣社員の活用には採用面でのメリットがありますが、デメリットもあります。
- 派遣期間が制限されている
- 社内ルールを説明する必要がある
- 業務内容が制限されている
以上のデメリットも考慮したうえで、派遣社員を活用しましょう。
派遣期間が制限されている
派遣社員は労働者派遣法で、派遣期間が原則3年と決まっています。
期間が限られるため、自社で採用した社員と比較すると職場への帰属意識が薄くなりがちです。帰属意識の薄さから、業務へのモチベーションや会社に対するモラルなどが低下し、情報漏えいをはじめとしたトラブルを招く恐れもあります。
トラブルを避けるため、事前に徹底したルールを作り、派遣社員にも共有しましょう。
社内ルールを説明する必要がある
即戦力として期待できる人材であっても、就業直後の派遣社員へは社内ルールや業務の進め方について説明しなければなりません。また、派遣社員が業務について感じた疑問や不明点の解消には、派遣先での対応が必要です。
一連の流れを理解し、スムーズに働いてもらえる状態になるまで、ある程度の時間を要するでしょう。マニュアルを整備し、同じ職場で働く労働者にも協力してもらえる体制を作り、業務に慣れるまでの時間を短縮できるよう工夫すると良いでしょう。
業務内容が制限されている
派遣社員は、労働者派遣契約(個別契約)の締結時に取り決めた以外の業務はできません。対応できない業務を割り振らないよう、契約している業務内容については社内で共有しましょう。契約にない業務を依頼したいときは派遣会社に相談し、契約内容の変更手続きが必要です。
また、労働者派遣法で定められた派遣禁止業務が存在します。
- 建設業
- 港湾運送業務
- 警備業
- 医療関連業務
- 弁護士・士業
以上に該当する業務は、そもそも労働者派遣事業をしてはならないとされており、派遣社員に依頼できません。
派遣社員を受け入れる際の注意点
派遣社員を受け入れる際の注意点は、以下のとおりです。
- 派遣先責任者を確認する
- 派遣社員の受け入れには期間制限がある
- 派遣禁止業務がある
事前に気を付けるべきことを確認し、派遣社員の受け入れに備えましょう。
派遣先責任者を確認する
派遣先責任者とは、派遣社員の就業管理を担当する人のことを指します。派遣社員を受け入れる際には派遣先責任者の選任が義務付けられており、違反すると罰金が課される場合があるため要注意です。
責任者の選任にあたって、特別な資格は要しません。ただし、以下の条件を満たす人材を選ぶよう推奨されています。
- 派遣社員の就業に関する事項を決定もしくは変更する権利を持っている
- 労働関連の法律知識を備えている
- 労務管理や人事での相当期間の経験もしくは専門知識を備えている
また、派遣先責任者は派遣社員1〜100人以下で1人、101〜200人以下で2人といったように、100人単位で選任すべき人数が決まっています。派遣社員の人数にあわせて、責任者を揃えておきましょう。
派遣社員の受け入れには期間制限がある
受け入れ期間制限とは原則として「同一の事業所で3年以上働くことはできない」と、労働者派遣法で定められたルールのことを指します。期間制限に反すると罰金が課されるため、適切な期間を把握することが大切です。
期間制限には、個人単位と事業所単位の2タイプがあります。個人単位の制限では、同一の事業所・部署で同じ派遣社員が働けるのは3年以内であることが原則です。3年を過ぎたら、他の派遣先を探してもらうか、同じ社内で異なる部署に移るなどの対処が求められます。
事業所単位の制限では、同一の事業所・部署で派遣社員を受け入れられる期間が3年と定められているのが特徴です。
たとえば、派遣社員AがC部署で2年間働いたあと、Aの入れ替わりとして新しい派遣社員BがC部署に来た場合、Bが就業できるのは1年間とされています。
ただし、派遣先が過半数労働組合等の意見を聞いたうえで、期間の延長が認められれば、期間の延長が可能です。
派遣の期間制限については「労働者派遣法の派遣期間制限とは?例外や抵触日の確認方法について解説」にて詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
派遣社員の受け入れ可能期間制限がない場合
派遣社員によっては、期間制限を設けることなく就業できる場合もあります。おもなケースは、以下のとおりです。
- 派遣社員が60歳以上である
- 終了期日が明確な期限付きプロジェクトに参加している
- 介護や出産、育児を理由に休業中の社員の代わりに業務をおこなっている
- 派遣会社と無期雇用派遣契約を締結している
- 1ヵ月あたりの勤務日数が通常の労働者の1/2以下かつ10日以下の日数限定業務を担当している
派遣禁止業務がある
派遣禁止業務とは、派遣が禁じられている業務のことです。以下の5つの業務があげられます。
- 建設業務
- 警備業務
- 港湾運送業務
- 医療施設における医療関連業務
- 士業
派遣禁止業務にも関わらず派遣社員を受け入れた場合、派遣先は是正・防止するための勧告や、勧告に従わない場合はその旨を公表することが労働者派遣法(第49条の2)で定められています。
会社の悪評にもつながりかねませんので、派遣が禁じられた業務についてもしっかり把握しておきましょう。
まとめ
人材派遣とは、派遣会社から条件にマッチした人材を派遣してもらうことです。ヒアリングのうえ、条件にあう人材を派遣会社が選び、派遣するためあり「採用の手間とコストがかからない」「即戦力になる」といったメリットがあります。
十分なスキルを持った派遣社員を受け入れるには、事前ヒアリングで細かな条件を伝え、顔合わせで派遣社員と業務の認識をすりあ合わせておくことが大切です。
また、契約書の締結と派遣先管理台帳の作成も忘れずおこないましょう。ほかにも、派遣期間は原則3年までとなり、業務内容に制限があるなどにもの注意し点もあるため、事前に必要事項を把握したうえで派遣社員を受け入れるようにしましょう。
人材をお探しの企業様はこちら
1990年の設立以来、
業界をリードする実力をぜひご活用ください。
企業のご担当者専用ダイヤル