派遣先管理台帳とは?記載項目や記入例、通知方法を徹底解
派遣先管理台帳は、「派遣社員がどのように就業しているのか確認するために必要な資料」です。しかし、実際に記入すべき項目や派遣会社への通知方法が分からない方も多いのではないでしょうか。そこで、こちらでは派遣先管理台帳の作り方などを紹介します。派遣社員の適切な労務管理のために役立つ情報を解説します。
目次
- 派遣労働者の氏名
- 派遣元事業主の名称・派遣元事業主の事業所名
- 派遣元事業主の事業所所在地
- 業務の内容
- 派遣労働者の責任の程度
- 協定対象派遣労働者かの別
- 無期雇用か有期雇用かの別
- 派遣就業する事業所の名称、就業場所および組織単位など、派遣社員が就業する事業場の名称や所属部署
- 派遣した事業所の所在地
- 派遣元責任者
- 派遣先責任者
- 就業状況
- 派遣労働者からの苦情処理状況
- 教育訓練の日時および内容
- 派遣受入期間の制限を受けない業務を行う労働者派遣に関する事項
- 雇用保険・社会保険の被保険者資格取得届提出の有無
- 紹介予定派遣の有無
派遣先管理台帳とは
派遣先管理台帳とは、派遣社員の就業状況を正確に捉えることを目的とし、派遣先企業によって作られるものです。管理台帳の一部は派遣会社への報告資料にもなるため、適切に作成・管理を行う必要があります。
派遣先管理台帳の作成は派遣先企業の義務
労働者派遣法では、派遣先管理台帳の作成義務が明記されています。また、一人ひとりの雇用管理を正確に行うため、管理台帳は派遣社員ごとに作らなくてはなりません。
雇用主である派遣会社には適切に派遣社員の管理を行う責任がありますが、毎日派遣先企業を訪れて勤務状況を確認するのは不可能です。そのため、派遣先企業が管理台帳を作り、派遣会社へ報告することで雇用管理体制を整える必要があります。
なお、派遣社員と直接雇用社員の合計が5人以下の事業所である場合は、例外的に管理台帳の作成義務がありません。しかし、義務化されていなくても派遣社員の雇用管理は業務上重要となることも多いため、記録を残しておくと安心でしょう。
派遣先管理台帳に記載するべき項目
ここからは、基本的な記入例を紹介します。記載すべき項目について詳しく解説しますので、抜け漏れがないよう気を付けましょう。
派遣労働者の氏名
派遣先企業で業務にあたる派遣社員の姓と名を記入します。
派遣元事業主の名称・派遣元事業主の事業所名
派遣会社の名称、事業所名を記入します。
派遣元事業主の事業所所在地
派遣会社の事業所がある住所、電話番号を記入します。
業務の内容
派遣社員が担当する業務内容を記入します。政令で日雇派遣の禁止対象から外れると認められた業務は、該当の号番号も記入してください。
派遣労働者の責任の程度
派遣社員が業務を行う上で認められた権限の範囲を記入します。この項目は、2020年の労働者派遣法改正により記入が義務付けられました。
役職がある場合は「サブリーダー」などの具体的な役職名、役職を持たない場合はそのことを記入するのが基本です。また、役職に関する事項だけでなく、部下の人数などの詳細も追記することが望ましいとされています。
協定対象派遣労働者かの別
労使協定方式を取り入れる派遣社員であるか否かを記入します。2020年の労働者派遣法改正では、正社員と派遣社員の待遇格差を是正するため、賃金を決める時に派遣先均等・均衡方式か労使協定方式のどちらかを選ぶことを義務としました。
労使協定方式は、派遣会社と労使協定を結び、派遣社員と同じ業務を担当する一般労働者と同等以上の水準で賃金を定める方法です。派遣先均等・均衡方式は、派遣社員と同じ業務を担当する正社員と差が発生しないように賃金を定める方法を指します。こちらの方法だと正社員の賃金情報開示などの手間がかかるため、一般的には労使協定方式を取り入れることが多いです。
無期雇用か有期雇用かの別
派遣会社と派遣社員の間で結ばれている契約が無期雇用と有期雇用のどちらであるかを記入します。
派遣就業する事業所の名称、就業場所および組織単位など、派遣社員が就業する事業場の名称や所属部署
派遣先企業の名称、事業所名、部署名を記入します。
派遣した事業所の所在地
派遣先の住所と電話番号を記入します。
派遣元責任者
派遣会社の責任担当者名を記入してください。主に派遣先企業との調整など、派遣社員の労務管理を行う立場です。
派遣先責任者
派遣先企業の責任担当者名を記入してください。主に派遣社員の業務管理などを行う立場です。
就業状況
業務を開始した時間・終了した時間・休憩時間を日ごとに記入します。
派遣労働者からの苦情処理状況
派遣社員から苦情があった時に記入します。日付・苦情内容・派遣先企業が行った対応を記録してください。
教育訓練の日時および内容
派遣先企業で教育訓練を行った場合、日付・時間・訓練の内容を記入します。
派遣受入期間の制限を受けない業務を行う労働者派遣に関する事項
派遣社員の受け入れ期間制限に当てはまるか否かを示す項目です。法律では3年間の受け入れ期間制限が設けられていますが、一部例外があります。以下の場合は、期間制限を受けない業務であることを記入してください。
- 派遣社員が60歳以上である
- 終了期日が明確な期限付きプロジェクトに参加している
- 介護や出産、育児を理由に休業中の社員の代わりに業務を行っている
- 派遣会社と無期雇用派遣契約を締結している
- 1ヶ月あたりの勤務日数が通常の労働者の1/2以下かつ10日以下の日数限定業務を担当している
上記以外の場合は、制限を受ける業務であることを記入します。
雇用保険・社会保険の被保険者資格取得届提出の有無
届出済みの場合は「有」と記入します。届を出していない場合は「手続き中」といったように理由を記入してください。
紹介予定派遣の有無
紹介予定派遣は、最長6ヶ月の契約期間後、派遣先企業と派遣社員の合意があった場合に直接雇用へ切り替えることを指します。紹介予定派遣に当てはまる場合は、以下の事項を記入してください。
- 紹介予定派遣に当てはまること
- 採用・不採用の結果
- 不採用もしくは辞退だった場合は、その理由
- 派遣社員の特定行為を行った場合は特定の基準
労働派遣法に関して、もっと知りたいという方は以下の記事で詳しく解説しております。労働者派遣法の基礎知識や、違反したときの罰則なども記載しておりますので、ぜひご覧ください。
派遣先管理台帳の記入例
派遣先管理台帳の記入例は以下のとおりです。
派遣労働者の氏名 | ◯◯ ◯◯(60歳未満) |
---|---|
派遣元事業主の名称 | 株式会社△△ |
派遣元事業主の事業所名 | 株式会社△△品川支店 |
派遣元事業主の事業所在地 | 〒141-0032 品川区大崎 ◯-◯-◯ ◇◇ビル20F 電話番号03-◯◯◯-◯◯◯ |
業務の内容 | PCによる会議用資料、プレゼン用資料等の作成業務および庶務業務 |
派遣労働者の責任の程度 | 役職無し(部下無し、所定外労働月1回程度有り)
協定対象派遣労働者である |
協定対象派遣労働者かの別 | 協定対象派遣労働者である |
無期雇用か有期雇用かの別 | 無期雇用 |
派遣就業した事業所の名称、就業場所および組織単位 | 株式会社△△商事 品川支店 営業部 |
派遣就業した事業所の所在地 | 〒141-0032 品川区大崎 ◯-◯-◯ ◇◇ビル30F 電話番号03-◯◯◯-◯◯◯ |
派遣元責任者 | 営業部係長 ◯◯ ◯◯ |
派遣先責任者 | 人事部係長 ◯◯ ◯◯ |
就業状況 | 6月1日(月) 9:00~18:00(就業時間)12:00~13:00(休憩時間)
※PCによる資料作成業務:8時間 6月2日(火) 9:00~18:00(就業時間)12:00~13:00(休憩時間) ※PCによる資料作成業務:7時間 ※社内会議出席:1時間 |
派遣労働者からの苦情処理状況 | 6月22日(月)
部署内の上司から執拗な誘いを受けたため拒否すると、業務に必要な連絡から外されたり、理不尽なことで叱責されたりするようになったとの苦情あり。セクシュアルハラスメント防止の啓発資料の配布と説明を実施。以後、上司からのハラスメントはなくなった。 |
教育訓練の日時および内容 | 6月1日(月)9:00~10:00
業務に必要なPC等に関する基礎訓練を実施 |
派遣受入期間の制限を受けない業務を行う労働者派遣に関する事項 | 派遣受入期間の制限を受けない業務(無期雇用派遣契約締結) |
雇用保険・社会保険の被保険者資格取得届提出の有無 | 雇用保険 有
厚生年金保険 無 (手続き中であり、6月20日には届出予定) 6月20日手続き済、有 健康保険 無 (手続き中であり、6月20日には届出予定) 6月20日手続き済、有 |
紹介予定派遣の有無 | 無し |
派遣先管理台帳の通知方法
派遣先管理台帳は、あらかじめ期日を決めた上で1ヶ月に1回以上、派遣会社指定の担当者(営業担当など)へ通知します。ファックス・メール・書面のいずれかの方法で送付してください。なお、決められた期日以外でも派遣会社から求められた時はすぐに通知を行います。
派遣先管理台帳で通知すべき内容
派遣先管理台帳で通知すべき内容は、以下のとおりです。
- 派遣社員の氏名
- 就業した日
- 就業した日の始業・終業・休憩時間(タイムカードで代替可能)
- 行った業務の内容
- 業務に伴う責任の程度
- 業務を行った事業所の名称、就業場所、組織単位
派遣社員から苦情を受けた場合は、苦情があった日付と内容、対応策についても通知する義務があります。
派遣先管理台帳の保管方法
管理台帳は、データもしくは紙で保管します。データの場合は、USBやハードディスクに保存したり、クラウドで管理したりして消失を防ぐことが大切です。紙で保管する場合も、スキャンしてデータ化しておくと安心でしょう。
また、保管期間は派遣社員の契約終了日から3年間です。契約終了後、トラブルがあった場合にすぐ就業状況を確認できる状態を整えておくなどの目的があります。
派遣先管理台帳の作成や管理を怠った場合はどうなる?
労働者派遣法に則り、罰金を課せられる場合があります。例えば、「管理台帳を作成していない」、「派遣会社への通知や保管を怠っている」といったケースでは、30万円以下の罰金となるリスクがあるでしょう。法律の義務違反が発覚した場合は派遣業務の許可が取り消される可能性も考えられるため、適切な管理を行ってください。
まとめ
派遣先管理台帳は、派遣社員の就業状況を確認し、派遣会社へ通知するために欠かせないものです。法律で義務付けられているのに加え、派遣社員の雇用管理に関する重要な資料になりますので、適切に作成する必要があります。記載すべき事項を確認し、法律のルールに則った形で管理台帳を作成・保管しましょう。
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