派遣先責任者とは?役割や選任方法、よくある質問を解説派遣先責任者とは?役割や選任方法、よくある質問を解説
派遣を受け入れて円滑な業務進行を実現するには、派遣先責任者の選任が不可欠です。派遣先企業で派遣社員の管理を行う派遣先責任者は、業務管理だけでなく労基管理なども行うため、派遣を雇いつつ健全な運営をするためにも役立つでしょう。法律でも派遣先責任者は選任しなくてはいけないものとして定められているため、選任方法などをしっかりと把握しておくことが大切です。
当記事では、派遣先責任者の基本的な情報と選任方法や役割について解説します。
目次
- 指揮命令者及びその他関係者への周知
- 派遣受入期間の延長通知に関すること
- 派遣先管理台帳の作成、記録、保存と通知
- 派遣社員から受ける苦情の処理
- 安全衛生に関すること
- 派遣元事業主と派遣社員に関する連絡および調整
- Q.正社員以外を派遣先責任者にすることはできる?
- Q.役員を派遣先責任者にすることはできる?
- Q.派遣先責任者として選任できる人がいない場合どうしたら良い?
- Q.派遣先責任者は常駐する必要がある?
- Q.派遣先責任者は兼任できる?
派遣先責任者とは
派遣先責任者とは、派遣社員の管理全般を行なう役職のことを指します。主に、労基法などの規定に関する周知や、派遣社員の期間や業務内容・苦情などに対応した業務を行います。
派遣先責任者は労働者派遣法に基づいて選任されます。派遣社員が安全かつ健全に働けるような環境を整備するために管理を行うことが責務で、派遣を取り扱う上で重要なポジションであるといえるでしょう。
もし、派遣先責任者を選任しなかった場合、派遣法に抵触して罰金に処されるケースもあるため、派遣を受け入れる企業は必ず選任する必要があります
派遣先責任者の選任方法
派遣先責任者の選任方法に関して、派遣事業所ごとに専属の派遣先責任者として選任することが求められます。あた、派遣社員の人数に合わせて適正人数の派遣先責任者を選任しなくてはいけません。以下では適正人数について表でまとめました。
派遣スタッフ数 | 必要な派遣先責任者の人数 |
---|---|
1人〜100人以下 | 1人以上 |
101人~200人以下 | 2人以上 |
201人~300人以下 | 3人以上 |
*派遣先企業の社員と派遣社員を合わせた人数が5人以下の場合は、派遣先責任者の選任は必要が無い
複数人の派遣先責任者を選任する際、役員を選任することは可能ですが、監査役の人は選任することができないので注意してください。
派遣先責任者に必要な資格
結論から言うと、派遣先責任者には必要な資格はありません。ですが、責任者という立場である以上はある程度のスキルが求められるのも事実で、厚生労働省は「派遣先が講ずべき措置に関する指針」で以下3つの条件を満たしていることが、派遣先責任者には求められるとして提示しています。
【派遣先責任者に求められる3つの条件】
- 労働関係法令に関する知識を有する
- 人事・労務管理等について専門的な知識または相当期間の経験を有する
- 派遣労働者の就業に係る事項に関する一定の決定、変更を行い得る権限を有する
これらの条件を把握して、派遣会社は最適な人材を選任するようにしてください。
派遣先責任者の役割
派遣先責任者は派遣社員の管理全般を行ないます。業務を通して求められる具体的な役割は以下の通りです。
【派遣先責任者の役割】
- 指揮命令者及びその他関係者への周知
- 派遣受入期間の延長通知に関すること
- 派遣先管理台帳の作成、記録、保存と通知
- 派遣社員から受ける苦情の処理
- 安全衛生に関すること
- 派遣元事業主と派遣社員に関する連絡および調整
指揮命令者への通知、管理台帳の作成、安全衛生など多岐にわたって業務を行なうことが求められるため、比較的業務負担の量は大きい傾向にあります。それぞれの役割に関する詳細を以下で確認していきましょう。
指揮命令者及びその他関係者への周知
「指揮命令者及びその他関係者への周知」とは、指揮命令者やその他関係者に「派遣スタッフに関する法規定」「労働者派遣契約の内容」「派遣元から受けた通知内容」を伝達することを意味します。
*指揮命令者とは、派遣社員に対して業務の指示をする人のこと
指揮命令者は、派遣社員が業務をする現場の管理をする業務責任者的な立ち位置で、派遣先責任者はそれら全体を把握しながら「派遣社員の管理」を行なう立ち位置となります。
派遣受入期間の延長通知に関すること
派遣法の改正によって、労働派遣者には期間制限が設けられることになりました。原則3年が上限と決められており、それ以上は派遣先企業に直接雇用をしてもらうか、新たな派遣先の提供をしなければなりません。
しかし制度上、同企業内の別部署(別組織)であれば期間制限の対象とならないため派遣することができます。この際、派遣受入期間の延長通知に関することの指示や管理を、派遣先責任者が行います。
派遣先管理台帳の作成、記録、保存と通知
派遣先管理台帳とは、派遣スタッフの労働日、労働時間、就労実態などを記載する書面のことを指します。派遣社員を利用している企業では、派遣先管理台帳を作成・保管しておく必要があり、その業務は派遣先責任者の役割とされています。
また、派遣先管理台帳に記載されている内容の一部は、派遣会社に月1回以上の通知をする義務があるため、適切な管理をしておくことも大切になるでしょう。通知すべき記載内容は以下の通りです。
【派遣会社に通知する派遣先管理台帳の記載内容】
- 派遣社員の氏名
- 派遣社員が行う業務内容
- 派遣スタッフが従事する業務に伴う責任の度合い
- 派遣スタッフが労働に従事した事業所の名称と所在地、そのほか派遣就業をした場所、組織単位
- 派遣就業をした日 など
派遣社員から受ける苦情の処理
派遣先責任者は、派遣社員から受ける苦情の処理も役割の一つにあります。苦情の処理といっても派遣先責任者自身で解決することが求められるわけではなく、苦情の内容を派遣元の事業主に通知するとともに連携して処理を図っていきます。
苦情は、パワハラやセクハラ、就業体制に関する苦情など様々で、苦情に応じて柔軟な対応が求められるため、苦情内容を想定してすぐに対応できるような準備をしておくことが求められるでしょう。また、苦情を派遣社員から申し受けた場合、それを理由に派遣社員に対して不当な扱いをすることは禁止されているので、苦情が入ったら冷静に状況を見極めて適切な対応を取るようにしてください。
安全衛生に関すること
派遣先責任者が行う安全衛生に関する管理は、安全管理全般と就業に伴う具体的な衛生管理のことを差します。一般的な健康等に関する管理は派遣会社が求められることであるため、派遣先責任者が責任を負う必要はありません。
また、派遣先責任者は派遣社員の安全衛生を的確に確保するために、連絡調整の役割も担う必要があります。基本的には以下で示す内容を連絡調整するので覚えておきましょう。
- 健康診断の実施に関する事項
- 安全衛生教育(作業内容変更時の安全衛生教育など)に関する事項
- 労働者派遣契約で定めた安全衛生に関する実施状況の確認
- 事故等が発生した場合の内容・対応状況の確認
派遣元事業主と派遣社員に関する連絡および調整
派遣元事業主と派遣社員に関する連絡及び調整を行うことも役割の一つです。厚生労働省が公開している「派遣元と派遣先との連携」によると、連絡調整の内容は以下のような事項になります。
【連絡調整をする内容】
- 健康診断
- 安全衛生教育
- 労働者派遣契約で定めた安全衛生に関する事項の実施状況の確認
- 事故が発生した場合の内容・対応状況の確認
- その他
派遣先責任者に関するよくある質問
Q.正社員以外を派遣先責任者にすることはできる?
Q.正社員以外を派遣先責任者にすることはできる?
A.可能です。ただし、派遣責任者の職務を全うするだけの権限があることが求められます
Q.役員を派遣先責任者にすることはできる?
Q.役員を派遣先責任者にすることはできる?
A.可能です。派遣スタッフの就労管理全般をおこない、必要に応じて適切な連絡・調整を行なうことが求められるため、それに対応できるだけの人を選任しなくてはいけません。
Q.派遣先責任者として選任できる人がいない場合どうしたら良い?
Q.派遣先責任者として選任できる人がいない場合どうしたら良い?
A.派遣先責任者の選任は法律で決められているため、選任できる人がいない場合は派遣契約を締結することができません。派遣社員を受け入れたいのであれば、派遣先責任者講習などを利用し派遣先責任者として適切な業務がおこなえる人材を育成する必要があるでしょう。
Q.派遣先責任者は常駐する必要がある?
Q.派遣先責任者は常駐する必要がある?
A.派遣先責任者の業務内容に、派遣労働者の勤怠の管理があるため、常駐でないと実態を把握できない点から、基本的には常駐できる人を選任することが求められます。
Q.派遣先責任者は兼任できる?
Q.派遣先責任者は兼任できる?
A.兼任はできません。
まとめ
派遣先責任者とは、派遣社員の管理全般を行なう役職のことを指します。派遣社員を利用するうえで、必ず選任しなくてはならない役職です。そのため、派遣先責任者を選任できない企業では派遣契約も締結することができないので注意しましょう。また、派遣先責任者を選任しなかった場合、派遣法に抵触して罰金に処されるケースもあります。
企業運営を進めるうえで、派遣社員を活用する場合は、自社の社員と合わせて健全な管理をすることが求められるので、適切なスキルをもった派遣先責任者を選任して派遣社員の管理を行なうようにしましょう。
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