人材派遣の専門26業務(業種)とは?法改正による撤廃の影響や企業の今後について
人材派遣には、法律によって定められた「専門26業務(業種)」と呼ばれるものが存在しています。法律の改正で撤廃されたものの、今後の企業への影響はどのように現れるのでしょうか。
本記事では、人材派遣における専門26業務(業種)についての詳細と人材派遣とその種類、法改正によってどのような影響が出てくる可能性があるのかについて解説します。
目次
- 人材派遣と人材紹介の違い
- 人材派遣と請負の違い
- 一般派遣
- 紹介予定派遣
人材派遣における専門26業務(業種)とは
専門26業務(業種)とは、労働者の力量次第で仕事の成果が変わってしまうような専門性の高い仕事を指します。労働派遣法によって定められており、該当する業務は以下のとおりです。
【専門26種の職種一覧】
ソフトウェア開発、機械設計、放送機器等操作、放送番組等演出、事務用機器操作、翻訳・通訳・速記、秘書、ファイリング、調査、財務処理、取引文書作成、デモンストレーション、添乗、建築物清掃、建築設備運転点検、整備、案内・受付・駐車場管理等、研究開発、事業の実施体制等の企画・立案、書籍等の制作・編集、広告デザイン、インテリアコーディネーター、アナウンサー、OAインストラクション、テレマーケティングの営業、金融商品の営業、放送番組等における大道具・小道具スタッフ |
厳密には28業務ありますが、法律改正前の通称が一般化しており、現在でも26業務と呼ばれています。
労働者派遣法においてこれらの業務には、最長3年間の雇用期間の上限が設けられませんでした。そのため上記の28業務についている場合は、3年を過ぎても継続して派遣労働者として働くことができたのです。
2015年の法改正で専門26業務は撤廃
専門26業務(業種)は、2015年の法改正で扱いがその他の派遣労働と同じ3年を上限とする規定に変わりました。廃止になった理由としては以下の3点が挙げられます。
- 専門性が明らかに高いと言えなくなった
- 半永久的に派遣社員を雇用できてしまい労働者が守られない
- 職種で雇用期間が異なる制度そのものが分かりにくい
またこれとは別に一般事務職が専門26業務に該当するとして無期限の派遣雇用していた事実も発覚。これらを受けて2015年に労働者派遣法が改正され、労働者の雇用の安定促進のために専門26業務(業種)についても上限3年が設けられたのです。
人材派遣とは
そもそも人材派遣とは、人材派遣会社が雇用契約を取り交わしている派遣労働者を、派遣先に送り出す雇用形態のことを指します。雇用関係は人材派遣会社と結ばれていますが、指揮命令権は派遣先企業にあるというのが特徴です。
解禁されたのは1986年で、職業安定法により一部の例外を除いて全面禁止となっていました。しかし現在は派遣労働者の保護を目的とした法律ができ、キャリアアップできるように改正が行われるなどしています。
人材派遣と人材紹介の違い
人材派遣とよく似たものに、人材紹介と呼ばれるサービスがあります。名前こそよく似ていますが実態は全く異なります。以下の表をご覧ください。
人材派遣 | 人材紹介 | |
---|---|---|
業務内容 | 派遣先企業が指定した業務 | 紹介先が指定した業務 |
契約形態 | 派遣元との雇用契約 | 紹介先との直接雇用契約 |
コスト・料金 | 社会保険・給与などの負担は派遣元
派遣元に対して派遣料を支払い |
すべて受け入れ先
採用時に成功報酬型の謝礼を紹介元に支払い |
業務内容はいずれも受け入れた企業が指定した内容に従事します。ただし、人材紹介で採用された場合は紹介先の企業との直接雇用となるため、人材派遣よりも責任のある仕事を任されることもあるでしょう。
また契約形態の違いに伴って就労中のコストは人材派遣の場合は派遣元負担なのに対し、人材紹介は紹介先の企業先となります。その他手数料の内容も異なってくるため、両者は全く別物と考えてよいでしょう。
人材派遣と請負の違い
人材派遣とよく似たもののもうひとつの就労形態に請負があります。こちらも人材派遣とよく混同されますが、以下のような違いがあります。
派遣 | 請負 | |
---|---|---|
契約目的 | 業務の補助 | 業務のアウトソーシング |
契約期間 | 最大3年 | 単日~ |
指揮命令権の所在 | 派遣先 | 請負先 |
派遣は30日以内の短期契約が禁止されているのに対して、請負は最短で1日から仕事に従事することができます。
そもそもこの両者は契約の内容が異なるため、一概に比較できないという性質があります。上の表を見て、契約目的や契約期間に違いがあることを覚えておきましょう。
人材派遣の種類
材派遣には大きく分けて2つの種類があります。それぞれの違いは次の通りです。
一般派遣 | 紹介予定派遣 | |
---|---|---|
派遣期間 | 最大3年 | 最大6ヶ月 |
採用前の面接の有無 | なし | あり |
派遣後の直接雇用の有無 | なし(例外もあり) | あり |
少しずつ内容が異なっているのには理由があります。以下ではその理由について解説します。
一般派遣
一般派遣とは、その通り派遣におけるオーソドックスな形態のことを指します。労働者派遣法で派遣期間は最大3年と決められており、派遣先企業が採用前に派遣労働者と面接することは禁止されています。
紹介予定派遣
紹介予定派遣とは、最大6ヶ月の派遣期間後に派遣先企業と直接雇用を結ぶ前提で契約する派遣労働者のことです。一般派遣と異なり事前に面接があるほか、派遣後は例外もあるものの基本的に直接雇用となります。必ず直接雇用を結ぶ必要はありませんが、企業が新たに人材を採用したい際に使われる契約形態です。
法改正は派遣先企業にどう影響する?
「2015年の法改正で専門26業務は撤廃」でも触れましたが、2015年の労働者派遣法の改正で専門26業務に対して派遣の上限期間が3年間と定められました。これにより半永久的な派遣雇用ができなくなり、労働者のキャリアアップなどの促進に繋がったのです。
そもそもこの3年という上限が設けられた背景には、厚生労働省の見解が関係しています。厚生労働省は3年以上に渡り派遣労働者を雇用しなければならない企業は、慢性的な人不足であるという見解を出しており、派遣労働者として迎え入れるのではなく直接雇用することを推奨しています。
改正以前と比較すると専門性が高くなくなったこと、専門26業務を理由に全く関係のない業務も半永久的につかせていたことなどが関係し、専門26業務そのものが撤廃されたのです。
現在も法改正が進んでおり、派遣労働者の方やキャリアアップを見込んだ内容が盛り込まれています。これまでの派遣の働き方や立ち位置とは全く異なり、社会に必要不可欠な存在として保護されるべき対象となっています。
人材派遣が向いている業種
人材派遣を活用するのに向いている業種は多くありますが、特にバックオフィスや運送・倉庫、製造といった業種で必要とされています。これらの業界は慢性的な人不足に悩まされている傾向があるほか、時期によって忙しさのピークが異なります。
そのため常時人員を抱えておくよりも、必要な時に必要な人数を調達できる人材派遣が向いていると言えるのです。
人材派遣が禁止されている業種
専門26業種の制限はなくなったものの、他の法律との兼ね合いで人材派遣が禁止されている業種が5つあります。以下に一覧でまとめました。
【人材派遣が禁止されている業種一覧】
|
専門性の高さや責任の重さ、業務そのものの危険度も関係しています。これらの業務に派遣先・派遣元が就労させた場合、法律によって罰則が科されるのです。詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひ確認してください。
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まとめ
人材派遣において、派遣禁止業務に指定されているもの以外に、プロジェクト業務や日数限定業務なども3年の期限の上限が設けられています。派遣労働者は直接雇用の労働者と比較して自由な働き方ができるものの、彼らのスキルアップの観点を忘れてはいけません。派遣労働者だからといって、自由に使役できるわけではないことを覚えておきましょう。
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