人材派遣の利益率(マージン率)|派遣料金の内訳と失敗しない派遣会社の選び方を紹介
人材派遣会社の利用を考えたとき、気になるのが利益率(マージン率)です。勘違いしていますが、実は派遣会社の利益率はマージン率とイコールではありません。
今回は、人材派遣会社を利用する際に必ずついてくる利益率とマージン率の関係を紹介します。後半では失敗しない派遣会社の選び方についても触れているので、派遣会社選びの参考にしてください。
目次
- 人材派遣の利益率は1.2%
- 大手派遣会社のマージン率
- 【業種別】人材派遣会社のマージン率
- 派遣会社の得意分野で選ぶ
- 派遣会社の規模感で選ぶ
- 信頼性で選ぶ
- 営業担当者で選ぶ
- 派遣依頼理由
- 業務内容
- 就業条件
- 資格・スキルの有無
- 職場環境・従業員数
人材派遣の利益率とは
人材派遣の利益率はマージン率と混同されがちですが、必ずしも一致するものではありません。
- 利益率:派遣料金のなかから派遣会社が受けとる利益の割合のこと
- マージン率:派遣料金のうち、利益も含めた売上の割合。マージンのなかから派遣社員の保険料や派遣会社の運営にかかる諸経費などを賄う
派遣先企業から支払われる派遣料金に含まれるマージンから、経費や社会保険料などを引いた額が人材派遣会社の利益になります。経費などは派遣会社によって異なるため、利益率も各会社によって変動します。なお、派遣料金の詳しい説明は後述しているので、そのまま読み進めてください。
人材派遣の利益率は1.2%
一般社団法人 日本人材派遣協会によると、人材派遣会社の利益率は約1.2%です。
一方で、厚生労働省の委託によりPwCコンサルティング合同会社が行った「労働者派遣法施行状況調査結果(派遣元に対する調査)」によると、利益率は5.9%。この調査は令和元年に一部の事業所を対象に行われた調査であるため、すべての派遣会社に当てはまるわけではありません。しかし、一般社団法人 日本人材派遣協会が示す数字を見ても、派遣会社の利益率は総じて10%以下であると推測できるでしょう。
大手派遣会社のマージン率
次に大手派遣会社のマージン率を見ていきましょう。
派遣会社名 | マージン率 |
---|---|
パーソルテンプスタッフ | 25.0% |
リクルートスタッフィング | 30.7% |
スタッフサービス | 31.1% |
パソナ | 32.4% |
アデコ | 29.0% |
マンパワー | 30.8% |
※各派遣会社の本社の最新情報を参照
大手派遣会社のマージン率は25%から30%前後です。前項で紹介した労働者派遣法施行状況調査結果(派遣元に対する調査)の結果でもマージン率の平均は30%であると示されており、大手だからマージン率が高いというわけではないことがわかります。
マージンだけではなく、大手人材派遣会社ではどのような違いがあるかをまとめた記事が以下になります。こちらもぜひご覧ください。
「人材派遣会社大手5社を徹底比較!項目別にランキングも紹介」
【業種別】人材派遣会社のマージン率
派遣会社のマージン率は業種によっても違ってきます。
業種・職種 | 平均マージン率 |
---|---|
事務 | 27~33% |
クリエイティブ | 29~33% |
技術職 | 29~38% |
サービス | 28~34% |
農業・漁業・林業 | 27~37% |
参照:厚生労働省「令和2年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」
マージン率は法律などによって上限または下限が設定されているわけではありません。しかし、おおよそ20~30%台が多くなっているのが表からも見て取れるでしょう。
派遣会社に支払う「派遣料金」の内訳
派遣料金とは派遣会社に支払う費用の総額のことを言います。派遣料金の内訳は次のとおりです。
- 派遣社員の給与
- 社会保険料
- 雇用保険料・労災保険料
- 教育訓練費・福利厚生費
- 派遣会社社員の人件費
- 派遣会社の営業利益
派遣先企業は、派遣社員に対する給与やマージンなどを含めたすべての費用を「派遣料金」として派遣会社から請求されます。上記のうち、派遣社員の給与以外はマージンで賄われるため、追加で支払う必要はありません。
「マージン率が低い=よい会社」ではない
マージンにはさまざまな費用が含まれているため、マージン率が低いからよい会社であると判断するのは早計です。マージン率が高い分、派遣社員にしっかりとした教育を施していることが期待できるうえに、福利厚生などのサポートがしっかりしているため、派遣社員が簡単に辞めないことも予想できるでしょう。ただし、なかにはマージン率の高さに対して見合わない人材が派遣されるケースもあるため、「マージン率が高いからよい会社」という訳でもない点には注意が必要です。
失敗しない人材派遣会社の選び方
派遣社員を受け入れたい企業がまず行うことは、次のポイントを押さえたうえで派遣会社を選ぶようにしましょう。
- 得意分野で選ぶ
- 派遣会社の規模感で選ぶ
- 信頼性で選ぶ
- 営業担当者で選ぶ
派遣会社の得意分野で選ぶ
派遣会社には「幅広い業種・職種」が得意な会社と、「特定の業種・職種」が得意な会社があります。特に即戦力を希望する場合は、後者の「特定の業種・職種」の人材が多く登録している派遣会社を選ぶ方が、希望人材が見つかりやすいでしょう。希望する職種にもよりますが、登録人材のなかには国家資格や珍しいスキルを持っている人が登録していることもあるため、期待以上の人材を派遣してもらえることもあります。
派遣会社がメインで取り扱っている職種はなにかを調べるためには、ホームページをチェックしてみましょう。取り扱い職種や実際に掲載している求人の職種を見れば、得意分野が見えてくるはずです。
派遣会社の規模感で選ぶ
派遣会社には、大手派遣会社と地域密着型の派遣会社があります。それぞれの特徴は次のとおりです。
- 大手派遣会社
基本的に全国どこにでもあり、集客力が高いので登録スタッフも多く優秀な人材を派遣してもらいやすい傾向にあります。取り扱う職種・業種が多くなるため、細かいサポートが受けられない可能性がある点はデメリットです。
- 地域密着型派遣会社
地元の人材・企業に特化しており、少数精鋭で運営しているためコミュニケーションが密に取りやすいでしょう。大手に比べて知名度が低いので人材が集まりにくいのはデメリットです。
自社の優先順位を洗い出し、それぞれの特徴と擦り合わせたうえで選ぶと失敗しづらくなります。
信頼性で選ぶ
企業にとって大切な人材を派遣してもらう派遣会社は信頼性が高いに越したことはありません。信頼性を見極めるポイントの一つとしては、ISO・ISMSなど、「情報セキュリティマネジメントシステム」の認証を取得しているかどうかが挙げられます。
派遣会社では派遣先企業の情報や登録スタッフの個人情報など重要な情報を取り扱っています。そのため、セキュリティについての認証を受けている会社の方が、情報漏洩などの観点で安心して利用できます。
営業担当者で選ぶ
同じ派遣会社でも担当者の腕によって、企業が望む人材が派遣されるかどうかも変わってきます。派遣会社の担当者との会話を通して、次のような点を確認してみましょう。
- ヒアリングをしっかり行ってくれるか
- 業種や職種に対しての知識・理解があるか
- 適した人材をイメージできるか
- 適当に人材を選定していないか
派遣とはいえ、すぐに辞められては人材不足となり業務に影響が出かねないので、企業側の意図をしっかり汲み取り最適な人材を選出してくれる担当者かどうかを見極める必要があります。
人材派遣会社に事前に伝えておくこと
派遣会社で人材を派遣してもらう前に、次のようなことをしっかり伝えておきましょう。
- 派遣依頼理由
- 業務内容
- 就業条件
- 資格・スキルの有無
- 職場環境・従業員数
それぞれ詳しく解説していきます。
派遣依頼理由
依頼側の意図や要望を正しく伝えるためにも、何のために人材が必要なのかを伝えておきましょう。そうすることで、派遣会社による派遣社員の選定にも期待が持てます。
業務内容
たとえば同じ事務職でも企業が違えば、業務内容も求める人材像も違ってきます。派遣会社の担当者が適任者をイメージしやすいよう、業務内容は詳細に伝えておきましょう。
就業条件
登録人材にも希望条件があるため、終業時間や残業の有無など就業条件は正確な情報を伝えるようにしましょう。派遣会社に伝えてある情報と実際の派遣先での労働環境にギャップがあるとクレームに繋がりかねません。
資格・スキルの有無
あまりに難易度の高い資格・スキルを条件に挙げてしまうと、なかなか人材が見つからない事態に陥ります。いつまでも人手不足の状態が続くため、求める資格・スキルでも優先順位を決めておくことが大切です。
職場環境・従業員数
期間限定とはいえ、派遣先企業でうまくやっていけるかどうかは派遣就業を希望される方にとって重要な点です。職場環境や従業員数、男女比などを気にする求職者も多いため、職場環境が分かるような写真や、注意が必要な規定などがあれば、事前に伝えておくことで派遣してもらいやすくなるでしょう。
まとめ
人材派遣会社の利益率は1.2%と決して高くありません。必要以上に高い金額に設定されているイメージがあるのはマージン率と利益率が混同されているからです。マージン率は30%前後が平均になりますが、派遣会社はそのなかから派遣社員の教育訓練費や有給取得費用、福利厚生費などを賄っています。これらは直接雇用した場合に自社が負担するはずだった費用です。そう考えるとマージン率も決して高いとは言えないでしょう。
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