労働者派遣法とは?人材派遣の仕組みや改正のポイントをわかりやすく解説
労働者派遣法が制定されて以降、さまざまな改正が行われています。すべて派遣社員が安心して就業するために必要な改正ですが、「労働者派遣法はどのような内容なのか」や「罰則はあるのか」などの疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。
本記事では、労働者派遣法の基礎知識や制定された背景、違反したときの罰則などについて紹介していきます。
目次
- 一般派遣
- 紹介予定派遣
- 2021年4月施行規則の改正
- 2021年1月施行規則の改正
- 2020年の法改正
- 派遣先均等・均衡方式
- 労使協定方式
- 2015年の主な法改正点
- 派遣事業体制の一本化
- 3年ルール
- 期間制限ルールの変更
- 労働契約申込みみなし制度
- 2012年の主な法改正点
- 日雇派遣の禁止
- グループ企業派遣に関する規制
- 退職1年未満の労働者の同じ企業への派遣禁止
- マージン率などの情報提供
- 派遣労働者に対する待遇説明
- 有期雇用の派遣労働者に対する無期雇用転換措置
労働者派遣法とは
派遣社員は正社員とちがって柔軟な働き方ができる反面、雇用状況は常に不安定です。労働者派遣法は、立場的に不利になりやすい派遣社員を守るために制定されました。
この法律には、3年ルールや日雇派遣の原則禁止、同一労働同一賃金など、派遣社員の就業条件を整える内容が盛り込まれています。
労働者派遣法の主な構成は以下のとおりです。
- 派遣業務の範囲
- 派遣事業の許可
- 派遣契約に関する事項
- 派遣期間の定めについて
- 派遣元・派遣先に関する事項
- 個人情報の管理について
- 労働基準法などの労働法との関連適用と特例について
- 雑則・罰則
人材派遣の仕組み
人材派遣では、派遣社員は派遣会社と雇用契約を結んで派遣先企業で業務を行います。この場合、派遣会社が雇用主であり、派遣先企業は就業先・使用者という位置付けです。
派遣会社は主に以下のような業務を行って派遣社員をサポートします。
- 給料の支払いや福利厚生の手続き
- 派遣先の紹介
- 派遣先企業との交渉
- スキルアップに必要な研修
上記の派遣先企業との交渉には、労働環境の改善に関することや職場内のトラブルの解決なども含まれます。
派遣先企業は使用者として派遣社員に作業を割り振り、必要な指示・教育を行います。
人材派遣の種類
人材派遣には主に以下の2種類があります。
一般派遣
一般派遣は、最短31日以上から契約可能で、一般的に3ヶ月ごとに契約更新を行う労働者派遣の形態です。そのため、この場合の雇用契約は派遣社員と派遣会社が結ぶことになります。
多くの派遣会社では、派遣先で必要になる業務スキルを派遣社員が身に付けるための研修を行うほか、給与の支払いや、福利厚生の手続きなども行います。
紹介予定派遣
紹介予定派遣は、派遣先企業に直接雇用されることを前提とした労働者派遣の形態です。前提となる雇用形態には正規雇用、契約社員などがあります。
一定期間、派遣社員として派遣先に就業し、契約期間終了時に派遣社員と派遣先企業が合意すれば直接雇用に切り替わります。
この就業形態は、入社前に一定期間就業して職場環境や業務内容などが自分に合っているかを確かめられるため、企業と求職者のミスマッチを防ぐことが可能です。企業側も求職者側も、十分な時間を使ってお互いの相性や能力を確かめてから入社するかどうかを判断できます。
また、紹介予定派遣は自分の独力で就職・転職活動を行うときとはちがい、派遣会社の担当者が活動をサポートしてくれます。他者からの客観的なアドバイスを受けながら次の職場を決められるのは大きなメリットです。
さらに、業界・職種が未経験であっても、紹介予定派遣を利用すれば憧れていた企業や職種にチャレンジすることができるため、就職・転職活動を効率よく行えます。
紹介予定派遣に関する詳しい内容や、利用するメリットとデメリットは以下の記事で詳しく解説しています。こちらもぜひご覧ください。
労働者派遣法が制定された背景
派遣法が制定される直前、日本の経済は安定成長期に入っており、より多くの労働者を必要としていました。その理由として、経済が成長していることにより、OA機器を使いこなす専門スキルへのニーズがますます高まったこと、女性の社会進出がより進んだことなどが挙げられます。
ただし職業安定法では、それまで問題になっていた労働者の意志に反する労働や不当な賃金の搾取を抑えるために、事業として労働力の提供を行うことを禁止していました。そのため、ニーズは高まっていたものの、労働者派遣業は職業安定法でいうところの労働供給事業に該当する恐れがあったため、事業として労働力を提供できる状況ではなかったのです。さらに、事故や問題が起こったときの責任の所在や就労条件の曖昧さなども問題となっており、労働者を保護するという観点からも課題がありました。
このような背景から、労働派遣業へのニーズの対応と、労働者保護の課題を解決するために労働者派遣法が制定されました。この法律により、16種類の職種に限定して必要な許可を得れば労働派遣業が行えるようになったのです。
そして、1996年にはさらに高まるさまざまなニーズに応えるために労働派遣業の対象職種を26種類に拡大しました。ちなみに、労働派遣業の対象職種となる範囲を定めるものをポジティブリスト方式と言います。
1999年には、派遣対象の職種が原則的に自由になり、対象とならない職種のみを指定するネガティブリスト方式を採用しました。
ネガティブリストに含まれた職種は以下のとおりです。
- 建設
- 港湾
- 運送
- 警備
- 医療
- 士業
- 製造業
紹介予定派遣の仕組みは、2000年に追加されました。
2021年労働者派遣法改正のポイント
この項目では、2021年4月と1月に法改正された労働者派遣法のポイントについて紹介します。
2021年4月施行規則の改正
労働者派遣法では、2021年4月に2つの内容が改正されました。
- 派遣会社は雇用安定措置を行うに当たり、派遣社員の希望を聞き、その内容を派遣元管理台帳に記載しなければならない。
- 派遣法第23条第5項の規定により、派遣会社の事業主が提供すべきすべての情報は、インターネットなどの適切な方法により情報提供されるべきである。
この情報のなかには、派遣先企業から派遣会社に支払われる派遣料や派遣手数料(マージン率)も含まれています。マージン率の開示が義務になったことで、派遣社員も派遣先企業も適切な派遣会社を選べるようになりました。
2021年1月施行規則の改正
2021年の1月には、労働者派遣法の3つの内容が改正されました。
- 派遣会社の事業主が実施する教育訓練と希望者に対して行うキャリアコンサルティングの内容について、教育訓練計画の説明を行うことが義務付けられる。なお、計画の変更時にも説明は義務付けられる。
- 派遣会社と派遣先企業が取り交わす派遣契約書を電磁記録で作成することを認める。
- 派遣社員から労働基準法や労働安全衛生法などの労働関係に関する苦情があった場合、派遣先企業も積極的に対応しなければならない。
労働者派遣法の歴史
この項目では、労働者派遣法の歴史を新しいものから順に説明していきます。
2020年の法改正
2020年の法改正では、同一労働同一賃金が実現しました。
同一労働同一賃金は、雇用形態が正規でも非正規でも同じ業務をこなすなら、賃金の額や待遇なども同じにしなければならないという考え方によるものです。同一労働同一賃金には2つの方式があります。
派遣先均等・均衡方式
派遣社員の業務量や内容が派遣先の正社員と同様の場合、賃金などの待遇も同等にします。
労使協定方式
派遣社員と派遣会社の協議によって賃金が決まります。この場合、局長通達に基づく一般賃金以上の賃金支払いが必要になります。
2015年の主な法改正点
2015年の主な法改正点では、以下のような労働者派遣法の4つの内容が改正されました。
派遣事業体制の一本化
それまで許可制の一般労働者派遣事業と届出制の特定労働者派遣事業の2つが存在していましたが、許可が必要な一般労働者派遣事業を特定労働者派遣事業として行うケースが問題視されていました。
そこで両者を一本化し、新たに労働者派遣事業としてすべて許可制にしました。
3年ルール
派遣会社は、派遣社員が派遣先事業所の同一組織単位(部署)に3年間派遣される見込みがあると判断される場合は、派遣先企業に直接雇用を依頼する、新しい派遣先企業を提供するといった措置を取らなければならない、と定められました。
期間制限ルールの変更
1年と定められていた派遣期間について、同一の派遣先企業へ派遣できる期間を原則3年と変更しました。
労働契約申込みみなし制度
違法派遣と知りつつ派遣先企業が派遣社員を受け入れている場合、受け入れた時点で派遣会社と取り交わしている労働条件と同じ内容で契約の申込みをしたと扱います。この規定は、派遣社員を保護する目的で新設されました。
2012年の主な法改正点
2012年の主な法改正点としては、以下のような労働者派遣法の6つの内容の改正が挙げられます。
日雇派遣の禁止
この改正により、雇用期間30日以下の日雇派遣は原則禁止となりました。ただし、政令で定める18業務においてや、60歳以上の労働者や学生などについては対象外です。
グループ企業派遣に関する規制
派遣会社が特定のグループ内の企業であり、派遣社員を派遣する先も同じグループ内の企業である場合、派遣割合は全体の8割以下に制限されました。
退職1年未満の労働者の同じ企業への派遣禁止
それまで直接雇用で就労していた労働者が、退職後1年以内に同一企業へ派遣社員として派遣されるのは禁止です。これは、労働条件を切り下げて、引き続き派遣先での業務につかせる行為を抑止する目的で設けられました。
マージン率などの情報提供
派遣社員や派遣先企業がよりよい派遣会社を選べるように、マージン率や教育訓練の内容などを明示することが義務付けられました。また、派遣会社は派遣社員に対して、派遣料金の額を明示することも義務付けられています。
派遣労働者に対する待遇説明
派遣会社は派遣社員に対して、派遣元の事業運営に関する事項、派遣制度の説明、賃金の見込み額、交通費などの待遇の内容を説明することが義務になりました。
有期雇用の派遣労働者に対する無期雇用転換措置
派遣会社は、1年以上同じ派遣先に就業している派遣社員が希望した場合、無期雇用の機会提供、無期雇用転換に必要な教育訓練の実施などを行う必要があります。加えて、派遣社員が無期雇用なのか有期雇用なのかを派遣先企業に通知することも必要になります。
労働者派遣法に違法した場合
労働者派遣法に違反した場合、以下のような処分が下される可能性があります。
- 業務改善命令(違反項目に対する是正を求められる)
- 事業停止命令(違反内容に対する改善が確認できるまで事業の停止が求められる)
- 許可の取り消し(労働派遣事業の許可要件を満たさない場合に下される実質の廃業扱い)
労働者派遣法に違反しないための対策は、違反しやすい行為を理解しておくことです。
主な違反行為は以下のとおりです。
- 二重派遣
- 労使協定の報告忘れや虚偽の報告をする
- 同じ派遣先企業に3年を超えて派遣を継続する
- 派遣社員に就業条件などの必要な情報を説明しない
上記で特に対応を忘れやすいのが3年ルールなので、抵触日は忘れずに把握しておくようにしましょう。
まとめ
労働者派遣法は、これからも労働者保護の観点から改正が繰り返されると予想されます。そのため、最新の改正内容について常に注視しておくことが大切です。派遣社員と実際に雇用契約を結ぶのは派遣会社になるため、受け入れ側の派遣先企業は法律に関して理解が甘くなってしまうこともあるかもしれません。しかし、後にトラブルとならないためにも、法改正の際にはしっかりとチェックするようにしましょう。
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