65歳以上の高齢者を雇用する際に活用できる助成金を紹介
少子高齢化で労働人口が減少し、業界を問わず人手不足解消のために高齢者の雇用が進められています。こうした状況下で、企業にとって働く意欲がある高齢者を確保できるかは重要な課題といえるでしょう。
政府も高齢者の雇用に積極的であり、さまざまな助成金を設けています。ここでは、高齢者の雇用に関する助成金の種類と、高齢者雇用に関する注意点について解説します。
目次
- 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
- 65歳超雇用促進助成金(65歳超継続雇用促進コース)
- 65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)
- 65歳超雇用促進助成金(高年齢者無期雇用転換コース)
- 定年年齢は60歳以上に設定
- 高齢者雇用において必要な2つの手続き
- 雇用する高齢者の社会保険加入手続き
雇用に関する助成金とは
雇用の安定、職場環境の改善、従業員の能力向上など、厚生労働省では多くの雇用に関する助成金を設けています。例えば、新型コロナウイルス感染症の影響により、経営が悪化する中で、労働者の雇用を維持しようとしている事業主に対して支給される「産業雇用安定助成金」があります。また、被災離職者、身体障害者、知的障害者などを継続して雇用する労働者として雇入れる事業者に対しては「特定求職者雇用開発助成金」が支給されます。
60歳以上の高齢者雇用に関する助成金
60歳以上の高齢者雇用に関する助成金にはさまざまな種類があります。ここでは、以下の助成金の受給条件や支給額、制度の概要などについて説明します。
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
特定求職者雇用開発助成金とは、条件を満たした従業員を新た に雇入れる事業者に厚生労働省から支給される助成金です。全部で5コースありますが、そのうちの一つが特定就職困難者コースです。高年齢者や障害者等の就職困難者をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者として雇入れる事業者に対して支給されます。
申請の流れは、求職者を雇い入れたら、申請は労働局またはハローワークで行います。支給申請書の記載事項と支給要件が申請先で審査され、支給・不支給の決定が申請事業者に通知書が送付される形で行われます。
受給条件 | 支給額 |
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雇用保険の一般被保険者として雇い入れ、対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ、当該雇用期間が継続して2年以上が確実であると認められていること | 【短時間労働者以外】
・中小企業が対象の場合、支給額は60万円 ・中小企業以外の企業が対象の場合は50万円 【短時間労働者】 ・中小企業が対象の場合、支給額は40万円 ・中小企業以外の企業が対象の場合は30万円 |
出典:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」
65歳超雇用促進助成金(65歳超継続雇用促進コース)
65歳超雇用促進助成金(65歳超継続雇用促進コース)とは、65歳以上への定年引上げ等の取り組みを実施した事業主に対して助成するものであり、高年齢者の就労機会の確保および希望者全員が安心して働ける雇用基盤の整備を目的としています。
受給条件 | 支給額 |
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・労働協約または就業規則により、新しい制度を令和4年4月1日以降に実施し、就業規則を労働基準監督署へ届け出た事業主であること。
・就業規則により定年の引上げ等を実施する場合は専門家等に就業規則の作成又は相談・指導を委託し経費を支出したこと。または労働協約により定年の引上げ等の制度を締結せるためコンサルタントに相談し、経費を支出したこと。 ・高年齢者雇用推進者の選任および高年齢者雇用管理に関する措置を1つ以上実施している事業者であること。 |
「対象被保険者数」および「定年等を引き上げる年齢」に応じて異なる。 |
65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)
高年齢者評価制度等雇用管理改善コースは、高年齢者の雇用促進を図るための雇用管理制度の整備にかかる措置を実施した雇用主に対する助成制度です。
申請方法は、雇用管理整備計画書に必要書類を添えて、雇用管理整備計画の開始日から起算して6ヶ月前の日から3ヶ月前の日までに、主たる事務所または当該高年齢者雇用管理整備措置を実施する事務所の所在する都道府県の支部高齢・障害者業務課に提出します。
受給条件 | 支給額 |
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・雇用管理整備計画の認定
・高年齢者雇用管理整備措置の実施 |
対象経費の60%(生産性要件を満たしている場合は75%)、中小企業事業主以外は45%(生産性要件を満たしている場合は60%)。 |
65歳超雇用促進助成金(高年齢者無期雇用転換コース)
65歳超雇用促進助成金(高年齢者無期雇用転換コース)は、50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換させた事業主に対して国の予算の範囲内で助成金を支給します。生産性を向上させた事業主には助成金が割増されます。
申請方法は、無期雇用転換計画書に必要書類を添えて、無期雇用転換計画の開始日から起算して6ヶ月前の日から3ヶ月前の日までに、主たる事務所または転換の実施に係る事業所の所在する都道府県の支部高齢・障がい者業務課に提出します。
受給条件 | 支給額 |
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・無期雇用転換計画の認定
・無期雇用転換計画の実施 ・併給調整 |
対象労働者1人あたり48万円(中小企業事業主以外は38万円)。生産性要件を満たす場合には、対象労働者1人につき60万円(中小企業事業主以外は48万円)。 |
高齢者雇用に関する注意点
高齢者を雇用するにあたっては、以下の3つの注意点があります。
定年年齢は60歳以上に設定
1つ目の注意点は、定年年齢は60歳以上に設定することです。
「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」において、定年年齢は60歳を下回ってはならず、企業は①定年の引上げ、②継続雇用制度の導入、③定年の廃止のいずれかの措置を講じなければならないとされています。
さらに、2021年4月より施行されている改正高年齢者雇用安定法では、70歳までの就業確保が努力義務化されました。
高齢者雇用において必要な2つの手続き
2つ目の注意点は、高齢者雇用において必要な以下の2つの手続きを忘れないことです。
・高年齢者雇用状況報告
高年齢者雇用状況等報告書とは、6月1日時点の高齢者の雇用状況、企業の定年年齢などをハローワークに届出するための書類です。届出が必要なのは、常時雇用する従業員が31人以上の企業です。
・多数離職届
高年齢者雇用安定法第16条は、雇用する高年齢者等が1カ月以内に5人以上が解雇等により離職する場合は「多数離職届」をハローワークに提出しなければならない旨、定めています。
雇用する高齢者の社会保険加入手続き
3つ目の注意点は、雇用する高齢者の社会保険加入手続きを忘れないことです。
厚生年金の上限年齢は70歳、健康保険の上限年齢は75歳です。新たに70歳以上の従業員を雇用したり、雇用している従業員が70歳になったりしたときは、一定の届出をする必要があります。これらの届出は、管轄年金事務所の窓口への持参または郵送、電子申請によって行います。
高齢者雇用は事業者にとって大きなメリットに
高齢者雇用は事業者にとって大きなメリットがあります。ここでは2つのメリットについて取り上げます。
メリットの1つ目は、人材不足の解消です。パーソル総合研究所によると、2030年には労働需要7,073万人に対して、労働供給は6,429万人で、644万人の人手不足になると予測されています。その解決策として労働生産性を上げるだけでなく、働くシニアを増やすことが必要です。
メリットの2つ目は、若い社員へのスキル・知識が伝承されることです。高齢者の仕事の経験や技術はマニュアル化されておらず、汎用化されていないものも多くあります。高齢者雇用を積極的に推進することで、彼らの「暗黙知」を実際に目でみることで学べます。そして、それらのスキルや知識を属人化させず、マニュアル化し、新しい世代に伝承していくことが可能になります。
まとめ
高齢者雇用は、いま日本社会が抱えている課題を解決するために役立ちます。人手不足だけでなく、今後も増えていく高齢者自身が生きがいを見出すためにも役立ちます。政府のさまざまな助成金制度を活用して、高齢者雇用を進めていくことがどの企業にも求められています。
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