小売業の教育・人材育成で効果的な取り組みとは？事例も紹介

小売業の教育・人材育成における課題

小売業における教育・人材育成で課題とされるものは主に2つあります。

ひとつは新人教育です。アルバイト・正社員を問わず、小売業は人手不足が叫ばれ続けています。その理由のひとつとして、現場の販売員がどのような能力を発揮することで売上に繋がるのかが不明瞭というものがあります。この能力を捕らえられていない場合、やりがいを失ったり力不足を感じたりして、早期退職につながってしまいます。

もうひとつが店長などの現場責任者の育成です。新人教育に通ずるものがありますが、それに加えて店舗の売上目標やキャンペーン、メンバーのマネジメントなど販売員以上に必要な能力があります。これらが上手く機能せず、店長候補者が減少してしまう悪循環が生まれています。仮に店長になっても、狙ったような成果が出ず、結果としてモチベーション低下につながっている可能性もあるでしょう。

これらの課題をクリアするため、小売業においても教育や人材育成が必要であると言われています。

以下の記事で、より詳しい小売業の抱える課題や対策などをご紹介しています。こちらもぜひご覧ください。

「小売業が抱える課題とは？最新動向や対策をわかりやすく解説」

小売業における教育・人材育成の重要性

小売業における教育・人材育成は、以下の観点から非常に重要であると位置づけられています。

• 生産性の向上
• 従業員のモチベーションの向上
• 新たな事業展開に向けた準備

それぞれ具体的に解説します。

生産性の向上

小売業における生産性とは、従業員一人ひとりがその能力を発揮して結果を出すことを言います。厚生労働省が示した「労働経済の分析」においても、全企業の8割以上が生産性向上を人材育成の目的に据えています。

従業員の知識や能力が不足した状態では、思うように生産性を高めることができません。また近年はグローバル化が進んだ影響で、海外の同業他社と争うような状態となっています。企業が生産性を高める背景には、これらのライバルに打ち勝つ必要があるためで、そのための人材育成は必要不可欠な存在であると言えます。

従業員のモチベーションの向上

従業員のモチベーション向上に、教育や人材育成は重要であると言われています。福利厚生などの待遇面もそうですが、教育を施すことで成果につながり、従業員の自信につながるためです。

モチベーションが高まると仕事に対して自信が生まれるため、離職率低下にも繋がります。慢性的な人手不足が叫ばれる小売業において、教育や人材育成は、様々なメリットをもたらしてくれます。

新たな事業展開に向けた準備

将来的に事業展開を検討しているのであれば、尚更人材育成は欠かせません。企業や店舗が今抱えている問題を解決するために教育を実施するのはもちろん、規模を拡大するのであればロスを最小限に抑えて挑戦しなければなりません。

そのためには知識や経験を持った人材が必要不可欠です。この知識や経験を持つ人材を育てるためにも、小売業における人材育成が必要だと言われています。

小売業の教育・人材育成で効果的な取り組み

教育や人材育成が必要とわかっても、どのような取り組みを行えばいいかわからないという企業も少なくないでしょう。具体的な例として以下の4つを紹介します。

• マニュアルの整備
• 研修・トレーニングの実施
• 企業理念や経営目標の浸透
• 従業員とのコミュニケーション

本記事で紹介するのは方法のみですが、各種施策を実施するにあたり、ヒアリングや目標設定は欠かせません。従業員の抱えるニーズや不安、経営陣が思い描く将来像を組み合わせて、効果的な研修になるようにしましょう。

マニュアルの整備

マニュアルを整備することで、従業員に対して教育を施すことができます。作って終わりという現場も少なくありませんが、大前提として入ったばかりの新人が業務を見て覚えるというのは非現実的です。困った時に見返せるよう、また先輩従業員が後輩に教育を実施できるようマニュアルを作っておくといいでしょう。

紙でのマニュアルでも問題ありませんが、データベース化したり動画で作成したり方法は様々です。手間や労力はかかるものの、一人ひとりにかける教育の時間を考えれば大したことはありません。

研修・トレーニングの実施

より実践に近い状態での研修やトレーニングも有効です。代表的なものは接客対応であり、顧客から見られるポイントでもあります。マニュアル通りの接客でも構いませんが、中にはマニュアルに載っていないイレギュラーな対応を求められる場合もあるでしょう。そのような時に臨機応変に対応するためにも、研修やトレーニングは有効な教育方法と言えます。

企業理念や経営目標の浸透

企業理念や経営目標を教え込むことも重要です。ただ漠然と働いてもらうだけではやりがいを感じてもらいにくく、従業員のモチベーションアップには繋がりません。企業や店舗としてどのような目標を持っているのか、従業員にどうなって欲しいかなどのビジョンを共有することで、従業員のモチベーションアップにつながります。

従業員とのコミュニケーション

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、従業員とのコミュニケーションが疎遠になっているという経営者もいるでしょう。大勢でのコミュニケーションが難しいのは分かりますが、面談という形で一対一のコミュニケーションを取ることは可能です。

コミュニケーションを密に取っておくことで、経営者や店長に対して信頼感を持ってくれる従業員も出てくるでしょう。帰属意識が高まることで離職防止につながるほか、働きやすい環境として認知されるようになります。

小売業の教育・人材育成事例

本記事の最後に、小売業で教育や人材育成が成功した事例を2つ紹介します。同じ形態でなかったとしても、参考になる部分が見つかるかもしれません。

事例①

とある大型スーパーでは、研修時間が確保できないという課題を抱えていました。教育担当者が全店舗に配置されているわけではなく、教育の質もバラバラ。結果として店舗ごとに差ができてしまい、経営陣はこれを問題視します。

そこで考え出したのが動画での研修です。トレーナーが接客の方法やその他の業務を動画化し各店舗に配布しました。結果、今まで教育に時間が割けていなかったのが嘘のように改善。現在も動画は引き続き作られていますが、作成する側もYouTube感覚で楽しく取り組んでいるということです。

従業員の教育と同時に、教育の重要性が新たな方法を見つけ出した良い事例のひとつです。

事例②

全国展開しているコンビニエンスストアチェーンでも、人材育成の成功事例があります。

人手が不足している場合、オーナー自らが店頭に立ってレジなどの業務を行いますが、その結果経営方針が策定できないままの店舗がありました。本来の業務であるはずの売り上げ拡大の施策にまで手が回らない状態になっていたのです。

そこで実施したのが限定正社員の採用です。勤務地や勤務時間などを限定した人材を採用 。大量に採用してコストをかけて人材教育をするのではなく、一点集中で生産性が高まるようなスタイルで教育を実施しました。

その結果、店舗の店長が本来の業務を全うできるようになったのです。

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まとめ

小売業における教育・人材育成は、店舗が現在抱えている問題を解決するためだけではなく、将来的な事業拡大にも繋がる重要な要素です。人材を育てることで店長や経営者の負荷が減り、更なる事業拡大に繋がる可能性もあります。今まで教育や人材育成について優先順位を上げていなかった小売業の経営者・店長は、この機会に体制を見直してみてはいかがでしょうか。