労働契約申込みみなし制度とは?派遣先企業への影響や注意点を解説
労働契約申込みみなし制度とは、派遣先やその他において違法派遣が行われた場合、派遣先が派遣労働者に対して「派遣元の会社と同じ労働条件の契約」を申し込んだとみなす制度です。
申し込んだとみなされた日から1年以内に派遣労働者が申込み承諾の意思を示せば、派遣労働者と派遣先との間に労働契約が成立します。通常の派遣契約においては、労働者と派遣先の会社に雇用関係はありません。
しかし、違法派遣とみなされる行為があった場合、労働契約申込みみなし制度が適用されます。これは、違法派遣の根絶を目的とした制度です。派遣先は、違法状態が解消された日から1年間、労働契約の申込みを撤回できません。
目次
- 派遣禁止業務で派遣を受け入れた場合
- 無許可事業主から派遣を受け入れた場合
- 事業所単位の受入可能期間制限に違反して労働者派遣を受けた場合
- 個人単位の派遣受入期間制限に違反して派遣を受けた場合
- 偽装請負の場合
労働契約申込みみなし制度とは
労働契約申込みみなし制度とは、派遣先やその他において違法派遣が行われた場合、派遣先が派遣労働者に対して「派遣元の会社と同じ労働条件の契約」を申し込んだとみなす制度です。
申し込んだとみなされた日から1年以内に派遣労働者が申込み承諾の意思を示せば、派遣労働者と派遣先との間に労働契約が成立します。通常の派遣契約においては、労働者と派遣先の会社に雇用関係はありません。
しかし、違法派遣とみなされる行為があった場合、労働契約申込みみなし制度が適用されます。これは、違法派遣の根絶を目的とした制度です。派遣先は、違法状態が解消された日から1年間、労働契約の申込みを撤回できません。
労働契約申込みみなし制度の対象となる違法派遣
労働契約申込みみなし制度の対象となる違法派遣は以下の5つです。
【違法派遣の5類型】
- 派遣労働者を禁止業務に従事させる
- 無許可事業主から労働者派遣の役務提供を受ける
- 事業所単位の期間制限に違反して労働派遣を受ける
- 個人単位の期間制限に違反して労働派遣を受ける
- 偽装請負
派遣禁止業務で派遣を受け入れた場合
以下の業務は禁止業務とされており、派遣労働者を従事させた場合、違法派遣に該当します。
【禁止業務】
- 港湾運送業務
- 建設業務
- 警備業務
- 病院・診療所などにおける医療関連業務
- 弁護士や社会保険労務士などの士業
上記の業務は、それぞれ異なる理由で派遣が禁止されています。
港湾運送業務には独自の港湾労働者派遣制度が設けられているため、派遣サービスが禁止されています。
建設業務は指揮命令関係が不明確になりやすく、「建設労働者の雇用の改善等に関する法律」において労働者を雇用する者と業務の指揮命令は同一でないといけないとされていることから派遣が禁止されています。
警備業務では警備法によって警備業者が警備員を請負形態で契約するよう定められており、指揮命令も行うことが決められているため、派遣は禁止されているのです。
医療関連業務の場合、さまざまな医療の専門家が連携してサービスを提供する必要があるため、派遣会社が労働者を管理する派遣事業では指揮命令権の所在がわかりづらく意思疎通が図れないとみなされ、禁止されています。
そして士業では、個人が資格を有して業務委託を受けるのであって、指揮命令を受けて行う業務ではないため禁止です。
無許可事業主から派遣を受け入れた場合
無許可の事業主から派遣を受け入れた場合は、違法派遣に該当します。労働者派遣事業には都道府県労働局からの許可が必要であり、無許可で事業を行えば違法となってしまうためです。
また、許可を受けるためには以下の要件を満たしていなければなりません。
【労働者派遣事業の許可要件】
- 特定の企業に対してのみ労働者派遣を行うことを目的としていない
- 個人情報保護法に則って個人情報の管理を徹底している
- 派遣事業を適切に遂行できる資産要件と事業所用件を満たしている
事業所単位の受入可能期間制限に違反して労働者派遣を受けた場合
事業所単位の派遣受入期間制限に違反して派遣を受けた場合も、違法派遣として制度の対象になります。
派遣先は、同一の事業所において派遣受入期間である3年を超えて人材を受け入れてはいけません。ただし、抵触日の1ヶ月前までに過半数労働組合などから派遣可能期間を延長するための意見聴取を行った場合であれば、3年を限度として派遣受入期間を延長することが可能です。
個人単位の派遣受入期間制限に違反して派遣を受けた場合
派遣受入期間制限には個人単位もあり、違反した場合はやはり違法派遣とみなされてしまいます。同一の派遣労働者を、3年を超えて派遣先事業所の同一の組織単位に従事させた場合も同様です。
事業所単位の派遣受入期間を延長したとしても、派遣先の事業所における同一の組織単位で3年を超えて同一の派遣労働者を働かせることはできません。
偽装請負の場合
偽装請負とは、労働派遣法や労働基準法などの適用を免れることを目的として請負(業務委託)契約を締結し、実際に派遣を受けることを指します。もし法律の適用を免れるとの目的がなかったとしても、偽装請負であることを認識した時点から、契約申込みみなし制度の対象です。
偽装請負の目的は、個別のケースにおいて客観的事実から推認されます。特に日常的かつ継続的に偽装請負の状態であったケースでは、偽装請負を組織的に行っていたとみなされることが通常です。
労働契約申込みみなし制度の適用による派遣先企業への影響
労働契約申込みみなし制度の適用により、派遣先企業から労働者へ労働契約を申し込んだとみなされます。つまり、派遣先企業には労働者の直接雇用義務が発生し、労働者が申込みを承諾するという意思表示をした場合、これを拒むことはできません。
万が一、申込みを承諾した後に就労を拒むような行為が行われれば、厚生労働大臣による行政指導が行われる可能性もあります。行政指導に従わないと企業情報が公表されてしまうため、派遣先企業にとっては制度に従わないデメリットは大きいといえるでしょう。
また、直接雇用義務が発生するということは、新たに正社員として労働者を雇うための人件費を負担することにも繋がります。
労働契約申込みみなし制度が成立するタイミング
労働契約申込みみなし制度が適用されるタイミングは、派遣先が違法派遣を行った時点です。違法行為が行われた日ごとに労働契約の申込みをしたものとみなされることから、申込みを行っているとみなされるのも日ごとであると判断されます。
特定違法行為に該当する行為から1年間は承諾の期限が続くため、この間派遣先企業は申込みを撤回できません。
労働契約申込みみなし制度が認められた場合の対応
派遣元企業は、制度が適用された場合に派遣先が労働契約を申し込んだとみなすことを明示しなくてはなりません。
また、派遣先企業や労働者などから求められた場合、制度が適用された時点における派遣労働者の労働の条件ついて通知する必要があります。
画像引用元:厚生労働省「労働契約申込みみなし制度の概要」
労働契約申込みみなし制度において派遣先企業が注意すべき点
派遣先企業は、以下のポイントに注意する必要があります。
【注意すべきポイント】
- 派遣禁止業務に該当する業務の依頼をしていないか確認する
- 無許可の派遣元事業者から受けていないか確認する
- 事業所単位・個人単位の派遣受入期間制限を把握し、期間の厳守を行う
- 偽装請負とみなされることがないように、指揮命令系統の実態に気を付ける
まとめ
労働契約申込みみなし制度は、派遣先の企業が違法派遣を行っていた場合に、労働者と派遣先企業との間に直接の雇用関係があるとみなす制度です。派遣先も派遣元もお互いにみなし制度が適用されるような違法派遣の実態がないか確認し、禁止事項に抵触しないようにあらかじめ注意しておくことが重要でしょう。
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