シニア派遣のメリットとは?増加の背景や受け入れる際の注意点について解説
派遣という雇用形態であれば定年退職後に働くことができるため、近年「シニア派遣」という言葉に注目が集まっています。高齢者の就業数は年々増加しており、「退職後どう過ごすべきか」と悩む方が多いからです。
本記事ではシニア派遣とは何か、また企業が受け入れる際に知っておきたいメリットとデメリット、注意点について徹底解説。本記事を読めばシニア派遣について正しく検討できるようになるため、ぜひ最後までご覧ください。
目次
- 経験豊富な人材を即戦力として活用できる
- 必要な期間に必要なスキルのある人材を確保できる
- 経験者であれば教育コストが必要ない
- 体力面と健康面での不安
- シニア層のモチベーションへの対応
- 人間関係への配慮が必要
- シニア層ならではの悩みを理解する
- 必要に応じて体制の見直しを行う
- 特定求職者雇用開発助成金
- 65歳超雇用推進助成金
- Q.シニア派遣に定年はある?
- Q.シニア派遣の給与はどこから支払われる?
- Q.シニア派遣で交通費はどうなる?
- Q.シニア派遣の社会保険はどうなる?
シニア派遣とは
シニア派遣とは明確な定義があるわけではありませんが、簡単に説明すると50代〜70代の方を派遣することです。派遣社員であれば雇用に年齢が関係しないため、人生100年時代といわれている現代社会で自然と注目を集めていると考えられます。
実際にシニア層に特化した派遣サービスを提供している人材派遣会社も多数あり、少子高齢化社会では若手の人材不足が必然であることからシニア派遣は今後より注目を集めていくでしょう。
シニア派遣は、定年退職後に新しく仕事を始めたい方を中心に広がっているため、年金を受給しながら時短勤務するかたちが最も多い働き方です。フルタイムで働く方もいますが、年金とのバランスを考えて比較的緩やかに働く傾向にある点がシニア派遣の特徴といえるでしょう。
シニア派遣の仕組み
シニア派遣の仕組みは、派遣社員と正社員の違いを知ることによって理解できます。一般的に企業の正社員は定年が定められており、以前は定年退職の年齢が60歳でした。しかし、少子高齢化を理由に高年齢者雇用安定法が改正され、現在は65歳にまで引き上げられています。
それに対して派遣会社への登録には年齢制限がありません。また法律上でも派遣会社の募集や採用において年齢制限を設けることは禁止されています。そのため派遣社員という雇用形態では年齢に関係なく働くことが可能で、その点が正社員雇用との大きな違いです。
シニア派遣で定年退職後も働ける仕組みは、派遣社員の法律上の決まりによって成立しているといえるでしょう。
シニア派遣が増加している背景
シニア派遣が増加している背景には以下の5つがあります。
- 少子高齢化
- 人生100年時代への突入
- 年齢に関係なく働ける場所の増加
- 未経験でも可能な仕事の増加
- 経験者なら貴重な人材として企業が積極的に採用する
現代社会では少子高齢化が進み、労働人口が減少しています。また国がシニア層の活用をバックアップしていることから高齢者の就業数は年々増加傾向となっており、その結果シニア派遣も自然と増えているのが現状です。
先進国では平均寿命が伸びており、イギリスの組織論学者リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットが先進国では1/2の人が100歳を超えて生きる時代が来ることを予測し、新しい人生設計が必要だと唱えています。先進国である日本も例外ではなく、シニア派遣が注目を集めているのは時代の自然な流れです。
また現代ではシニア層が活躍できる場所が増加しており、年齢や場所にとらわれず仕事の選択肢が広がっている背景もシニア派遣増加を後押ししています。近年ではコロナウイルス感染症拡大の影響で、仕事のオンライン化が急加速しました。そのため高齢者でも負担が少ないリモートワークが可能になるなど、シニア層の活躍は広がりを見せています。
派遣の仕事の場合、未経験でも可能な仕事を紹介してもらいやすい点もシニア派遣増加の背景として挙げられます。新しい仕事を始めたいシニア層の方は、未経験可能なシニア派遣の仕事を選べます。その反面、経験重視の一般企業ではこれまで長年にわたって活躍してきた経験豊富なシニア層を人材として重宝する傾向もあります。これまでの経験や仕事をそのまま続けたいシニア層は企業から積極的に採用されることも珍しくありません。
以上のような背景から、シニア派遣は増加傾向となっています。
シニア派遣のメリット
シニア派遣の企業側から見たメリットは次の3点です。
- 経験豊富な人材を即戦力として活用できる
- 必要な期間に必要なスキルのある人材を確保できる
- 経験者であれば教育コストが必要ない
経験豊富な人材を即戦力として活用できる
企業では新卒採用以外では、経験やスキルのある人材が求められ重宝される傾向にあります。そのため即戦力となり得る貴重な人材を欲している企業は非常に多く、シニア層なら実務において豊富な知見とスキルの提供が可能です。
必要な期間に必要なスキルのある人材を確保できる
派遣社員は契約期間が設けられているため、企業が必要な時期に活躍してもらうことができます。例えば、社内の担当者が育休や産休のため長期間休む場合、その間は派遣社員に業務を代行してもらうなど柔軟に活用可能です。
経験者であれば教育コストが必要ない
スキルのある人材を即戦力として活用できる点は人材派遣の大きな利点であるため、シニア派遣では教育コストをかけずに業務を委託することができます。
ただし派遣社員の契約期間が過ぎれば、それ以降は業務を任せられない点や、自社にスキルやノウハウが蓄積しづらい点に注意が必要です。
シニア派遣のデメリット
シニア派遣のデメリットは次の3点です。
- 体力面と健康面での不安
- シニア層のモチベーションへの対応
- 人間関係への配慮が必要
体力面と健康面での不安
若手の従業員と比べると、体力面では大きな差があるため、身体的負担の大きな仕事や8時間のフルタイム勤務が厳しい方も多いでしょう。また健康面に関しては、突然の病気や欠勤のリスクも十分にあり得ます。
そのため、柔軟に働けるようシニア層の就業者の方とは働く前に話し合い、どこまで仕事ができるかどうかや仕事をする目的について双方で確認しておくことが重要です。
シニア層のモチベーションへの対応
仕事に意欲的な方も多くいますが、中には定年退職して暇だからという理由で応募されている方もいるでしょう。「お金を稼ぎたい」「社会に貢献したい」他者と関わりたい」など人によって仕事をする動機はさまざまです。そのためシニア層を受け入れる際は、なぜ定年退職後に仕事をするのかという目的を確認しておくことが重要です。
人間関係への配慮が必要
例えば、シニア層の方を若手の部下に配置した場合、シニアが不満を持ち、若手社員がどう接したらよいのか分からなくなってしまうケースは少なくありません。また部下ではなくても、若手社員ばかりの職場である場合、雰囲気に馴染めずに孤立してしまう傾向もあります。
そのため、シニア世代の人材配置には十分な注意を払う必要があります。不適切な配置をすると、社内に混乱をもたらす可能性があるからです。社内における既存の人間関係にシニア層を組み込んだ場合、人間関係上の問題が生じかねません。解決策としては、シニア世代向けに新しいポジションを用意するという方法があります。
シニア派遣を受け入れる際の注意点
企業がシニア派遣を受け入れる際の注意点は、次の2点です。
- シニア層ならではの悩みを理解する
- 必要に応じて体制の見直しを行う
シニア層ならではの悩みを理解する
シニア派遣は上記で見たように多くのメリットがあるため、企業はシニア派遣を活かすことで人手不足の解消だけではなく組織の活性化、若者の成長などさまざまな利点を生み出してくれます。
しかし、シニア派遣を受け入れる際には、シニア層ならではの悩みを理解することが重要です。シニア層は体力面や健康面で不安が大きく、体力の衰えや老化は60代以降の方は誰もが感じていることです。体力面・健康面への配慮は必須といえるでしょう。
必要に応じて体制の見直しを行う
また既存の従業員と年齢が離れている場合は、職場に馴染めるかどうか不安に思う方も多いでしょう。入社後の人間関係を構築するためにも、社員には日頃からダイバーシティ(多様性)に関する教育を行うといった対策が必要です。
働く環境は作業効率や成果に直結するため、シニア層の方が壁を感じない社内環境を作ることが非常に重要です。既存の業務を分業制にすることによって体制を見直して、シニアと若手で分担させて両者で適切な距離を図るといった方法もあります。
シニア派遣を受け入れると助成金を受けられる場合がある
シニア派遣を筆頭に、シニア層の活用は企業が注目しているだけでなく、国からも一目置かれています。国の高齢者就業の推進策の1つとして、シニア層の採用に意欲的な企業への助成金交付があります。定年退職年齢の引き上げや定年退職の廃止を行った企業には100万円以上の助成金が交付された例もあります。
具体的には次の2つの助成金が挙げられます。
- 特定求職者雇用開発助成金
- 65歳超雇用推進助成金
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金は、高齢者や障がい者などの就職困難者を雇い入れた雇用主に助成金を交付する制度です。交付される金額は30万円以上となっており、交付のためにはいくつかの条件を満たしている必要があります。
- ハローワークや民間の職業紹介事業者の紹介によって雇い入れること
- 雇用保険一般被保険者として雇い入れていること
- 継続雇用(1年以上)が確実だと認められること
- 高齢者の場合、雇用保険の高年齢被保険者として雇い入れること
条件はあるものの決してハードルは高くないため、積極的な助成金の活用が期待できます。
65歳超雇用推進助成金
65歳超雇用推進助成金は、生涯現役社会を実現するための国が定めた施策の一つで、65歳以上の労働者の意欲や能力を評価することが目的です。こちらは次の3つのコースに分かれています。
- 超継続雇用促進コース
- 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
- 高年齢者無期雇用転換コース
こちらも受給には、雇用継続などの導入要件を満たし、決められた期間内に申請する必要があります。また助成金の導入前に計画書を作成して認定を受ける必要があります。また次のいずれかを実施している企業にのみ助成金交付がされます。
- 65歳以上の定年引き上げ
- 定年の定めの廃止
- 希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入
- 他社による継続雇用制度の導入
助成金の利用を検討する際は、必ず詳細な条件を厚生労働省のホームページにて確認しましょう。
シニア雇用の助成金に関しましては、以下の記事でも詳しく解説しています。こちらもぜひご覧ください。
シニア派遣に関するよくある質問
最後にシニア派遣に関するよくある質問をまとめました。
Q.シニア派遣に定年はある?
A.シニア派遣とは派遣社員という雇用形態に区分されますが、派遣社員には定年というものがありません。そのためシニア派遣は年齢は関係なく、高齢者の方でも仕事に就くことができます。法律上でも派遣会社の募集や採用において年齢制限を設けることは禁止されています。ただし、企業は採用の際には応募者の年齢を見るのではなく、あくまでスキルや経験で判断するという点は頭に入れておきましょう。
Q.シニア派遣の給与はどこから支払われる?
A.シニア派遣の給与は、登録した人材派遣会社から支払われます。就業場所は派遣先の企業になりますが、派遣先の企業からは給与が支払われません。あくまで雇用契約を結んでいる登録した人材派遣会社から給与が支払われることになっています。
Q.シニア派遣で交通費はどうなる?
A.派遣社員も交通費が支払われるようになりました。2020年4月に改正労働者派遣法が施行され、同一労働同一賃金がスタートし、それによって派遣社員の交通費支給が義務付けられるようになったためです。そのためシニア派遣においても交通費は支給されることになっています。
Q.シニア派遣の社会保険はどうなる?
A.フルタイム勤務の場合、登録した派遣会社が手続きを行い、社会保険に加入することになります。フルタイム勤務のように契約条件が社会保険の加入条件を満たしている場合、正社員と同じように給料から社会保険料が差し引かれて手取り額が振り込まれます。ただし時短勤務の場合は、労働時間が一定時間を超えない限り、社会保険に加入できないことも。また年金支給者が、厚生年金に加入することはできないため、「在職老齢年金」という制度が適用されることがあります。
まとめ
本記事では、シニア派遣とは何か、また企業が受け入れる際に知っておきたいメリットとデメリット、注意点について徹底解説しました。ぜひ本記事を参考に、シニア層の活用を検討してみてください。
人材をお探しの企業様はこちら
1990年の設立以来、
業界をリードする実力をぜひご活用ください。
企業のご担当者専用ダイヤル