シニア人材を採用するメリット・デメリットとは?活用できる助成金などについて解説
シニア人材を採用するメリットは、人手不足の解消や若手社員の成長につながることのほかに、助成金を受けられることが挙げられます。反面、体力や健康、デジタルへの対応力が懸念されますが、勤務体系や研修制度などの工夫で対策が可能です。本記事では、シニア人材採用のメリット・デメリットと、助成金の種類について解説します。
目次
- 人材不足を解消できる
- 若手社員の育成・成長につながる
- ダイバーシティを実現できる
- 条件を満たせば助成金を受けられる
- 体力面・健康面の不安がある
- デジタルへの対応力に不安がある
- 賃金制度の見直しが必要
- 人員配置に気を配る必要がある
- 特定求職者雇用開発助成金
- 65歳超雇用促進助成金
- シニアが働きやすい職場環境を整える
- 多様な働き方を用意する
シニア人材を採用するメリット
シニア人材を採用するメリットは、下記の4つが挙げられます。
・ 人材不足を解消できる
・ 若手社員の育成・成長につながる
・ ダイバーシティ(多様性)を実現できる
・ 条件を満たせば助成金を受けられる
高齢者採用というと、デメリットを想定しがちですが、メリットもあります。下記項目で詳細を解説します。
人材不足を解消できる
シニア人材は、人材不足解消に結びつきます。少子高齢化に伴い、どの業界でも人材不足が不安視される中、働く意欲が高いシニア人材の採用は、人材不足解消の鍵となります。また、初心者や未経験者の若者よりも経験豊富な人材であれば、即戦力になることを期待できます。特に、専門性の高いスキルや知識が必要な職場では、シニア人材のほうが会社へ貢献してくれるでしょう。コンビニやスーパーやファストフード店での販売や接客、工事現場の交通誘導、各施設における警備、清掃、介護、工場の軽作業、運送業のドライバー、レストランの調理補助など、活躍できる業種は多岐に渡ります。
若手社員の育成・成長につながる
経験豊富なシニア人材は、若手社員の育成・成長をサポートする心強い存在となるでしょう。専門的な技術や、職人の腕が必要とされる業界では、若手の教育をシニア人材に任せられます。経験に基づいたアドバイスは、マニュアルの指示よりも説得力があり、若手だけではなく、中堅社員の参考にもなるでしょう。
ダイバーシティを実現できる
ダイバーシティとは、多様性の意味で、職場における人材の多様化を指しています。厚生労働省は、「多様な人材が活躍できる職場環境に関する企業の事例集」を作成し、企業による多様な人材採用・活用を促しています。
シニア人材を採用する際は、体力面などを考慮し、これまでとは違う勤務体系を取り入れる必要があります。ひいては、シニア人材だけではなく、主婦・主夫や、学生、フリーターなどを雇用する際にも、さまざまな形で受け入れることが可能になるでしょう。勤務体系の多様化は働き方改革にもなり、正社員の休暇や勤務時間にもよい変化をもたらすはずです。ダイバーシティを実現することは、企業文化の改善や、企業の評判を向上させることにもつながります。
条件を満たせば助成金を受けられる
シニア人材の雇用促進を実施している企業は、条件を満たせば「特定求職者雇用開発助成金」や「65歳超雇用促進助成金」など、国の助成金を受けられます。支給の条件や、支給金額は助成金によって異なります。助成金の支給条件や支給金額などの詳細については、後ほど「シニアを採用する際に活用できる助成金」の項目で詳細をお伝えします。
シニア人材を採用するデメリット
シニア人材を雇用する際の懸念点について、解説します。メリットの多いシニア人材ですが、若手と比べたときにデメリットを感じる側面もあります。しかし、デメリットをあらかじめ把握しておけば、対策を取ることが可能です。下記で、デメリットについて詳細を解説します。
体力面・健康面の不安がある
若手と比べ、どうしても体力や健康面での不安があります。特に、調理補助や警備、交通誘導は立ち仕事で体力も必要なため、フルタイムの8時間労働は難しいかもしれません。また、急なケガ、病気による欠勤や退勤のリスクもあります。しかし、勤務時間を調整する、休憩時間の取り入れ方を若手とは異なる体系で取り入れるなど、工夫次第で体力・健康面に関する課題を乗り越えられるでしょう。また、事務作業のような、あまり体力を必要としない業種では、体力・健康面に関する不安は他業種より少ないと言えます。ただあくまでこれは一般論であり、該当しないシニア人材もいるでしょう。
デジタルへの対応力に不安がある
シニア人材がデジタル機器を扱えるかどうか、不安に感じる業種もあります。例えば、レジ打ちや、レストランでの注文受付など、機器を操作する必要がある仕事は、若手よりも順応力が低い可能性があります。しかし、パソコンやスマートフォンが普及し、シニア人材のITリテラシーは高まってきています。趣味でそれらの機器を使用しているシニア世代の方もおり、一概にデジタルへの対応力が低いとは言い切れません。
賃金制度の見直しが必要
シニア人材を雇用するにあたっては、賃金制度の見直しが必要です。年功序列の従来型賃金制度を使用し、そのままシニア人材を雇用すると、若手よりも給与が高くなる可能性があるからです。シニア人材の貢献度合いは、若手よりも低い場合もあり、給与バランスが悪くなってしまうでしょう。また、若手も、自分よりも勤務時間が少なく、業務内容が簡単なシニア人材のほうが給与が高いと分かれば、モチベーションが下がり、離職してしまうかもしれません。
人員配置に気を配る必要がある
どの部署に配置するか、部署内の世代を考慮する必要があります。若いスタッフ・社員の多い部署にシニア人材を配置すると、周りのスタッフと馴染めず、最終的に離職することがあるからです。若手、シニアに関わらず、人間関係を理由に離職・転職をする方は多いです。人員配置の調整が難しい場合は、面接時に若手が多いことや、年下が上司になることなどを伝え、了承を得ておきましょう。
シニアを採用する際に活用できる助成金
シニア人材を雇用する際には、条件を満たせば助成金制度を活用できます。下記で、60歳以上の方の採用に関する助成金の受給条件や、支給額を紹介します。
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金とは、60歳以上の高齢者や、障がいなどで就職が困難な方を雇用する際の助成金制度です。いくつかコースがあり、今回は、シニア人材雇用に関するコースを紹介します。
コース | 受給条件 | 支給額 |
---|---|---|
特定就職困難者コース | l ハローワーク、または民間の職業紹介事業者等の紹介で雇用する
l 雇用保険の一般被保険者として雇用する l 労働者が65歳以上に達するまで継続して雇用し、雇用期間が継続して2年以上である |
l 短時間(週の労働時間が20時間以上30時間未満)労働者以外…30万円を1年間で2期にわたり支給
l 短時間労働者…20万円を1年間で2期にわたり支給 |
生涯現役コース | l 65歳以上の労働者をハローワーク、または民間の職業紹介事業者等の紹介で雇用する
l 雇用保険の高齢者被保険者として雇用する l 1年以上の雇用が確実である |
l 短時間(週の労働時間が20時間以上30時間未満)労働者以外…35万円を1年間で2期にわたり支給
l 短時間労働者…25万円を1年間で2期にわたり支給 |
コースを活用するためにはすべての条件を満たすことが必要です。また、労働者の労働時間によって支給される金額が異なるため、注意しましょう。
参考:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」
65歳超雇用促進助成金
65歳超雇用促進助成金とは、65歳以上のシニア人材が年齢に関わりなく働ける生涯現役社会を実現するため、厚生労働省により実施されている助成金制度です。企業は65歳以上の定年の引き上げや、高齢者雇用制度を整えることで助成金制度を活用できます。3つのコースがあり、下表でそれぞれの受給条件や支給額を紹介します。
コース | 受給条件 | 支給額・注意点 |
---|---|---|
65歳超継続雇用促進コース | l 労働協約または就業規則に明記した上で、1~4いずれかの制度を実施
(1)定年を65歳以上に引き上げ (2)定年制度の廃止 (3)希望者全員を66歳以上まで雇用できる継続雇用制度を導入 (4) 他社による継続雇用制度の導入 l 上記の制度を導入した際、経費を要している l 高年齢者雇用等推進者の選任及び高年齢者雇用管理に関する措置を実施している l 本コースに関する措置実施前の定年、または継続雇用年齢が70歳未満である l 60歳以上で1年以上継続雇用している被保険者が1人以上いる |
l 定年引上げの場合…15万円~105万円
l 定年廃止の場合…40万円~160万円 l 66歳以上の継続雇用制度を導入した場合…15万円~100万円 l 他社による継続雇用制度を導入した場合…10万円~15万円 l 1事業主につき、1回限りの支給 l 対象者数に応じて支給額が変わる。対象者数が多ければ多いほど、支給額が増える |
高年齢者評価制度等雇用管理改善コース | l 雇用管理整備計画を認定する
l 高年齢者雇用管理整備の措置を実施する l 高年齢者雇用管理制度に関する措置を、労働協約または就業規則に定める |
l 雇用管理制度の見直しに要した人件費を除く経費に60%(中小企業は45%)を乗じた金額
l 生産性要件を満たした場合、雇用管理制度の見直しに要した人件費を除く経費に75%(中小企業は60%)を乗じた金額 |
高年齢者無期雇用転換コース | l 下記2点を経て、50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換させる
(1)無期雇用転換計画の認定 (2)無期雇用転換措置の実施 |
l 無期雇用転換計画により、無期雇用になった対象者1人につき48万円(中小企業以外は38万円)
l 1適用事業者あたり10人まで支給 |
65歳超継続雇用促進コースは比較的取り組みやすいものの、対象者数に応じて支給金額が異なる点に注意しましょう。また、制度実施に要した経費とは、社会保険労務士への依頼料などを指します。全額負担することで、支給条件を満たせます。
高齢・障害・求職者雇用支援機構「65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)」
シニアを採用する際のポイント
シニア人材を採用する際には、下記の2点を踏まえて準備しておきましょう。
・ シニアが働きやすい職場環境を整える
・ 多様な働き方を用意する
シニアが活躍できる場を用意し、若手と共に成長できる環境にすることが重要です。詳細を解説します。
シニアが働きやすい職場環境を整える
シニア人材が働きやすい職場環境を整えましょう。勤務体系や賃金体系を整えたり、配属する部署を考慮したりすること以外にも、研修制度を整えマニュアルを用意することも、シニア人材を雇用する上では欠かせません。研修においては、紙面での説明や、研修資料の文字の大きさに気を配るなど、シニア人材が抵抗感なく研修を受けられるように配慮することも大切です。また、シニア層向けの軽作業を取り決めたり、キャリアを活かせる仕事を用意したりするなど、仕事内容も工夫すれば、シニア人材にとっても企業側にとってもプラスになるでしょう。
多様な働き方を用意する
短時間シフトを導入することや、勤務日数・勤務曜日の制限を設けないことなど、柔軟に対応できる勤務体系を用意しましょう。多様な働き方ができる職場は、シニア層以外の、主婦・主夫や、学生アルバイト、フリーターなどにとってもありがたいです。雇用の幅を広げることにも、一役買ってくれます。
まとめ
シニア人材を採用するメリットは、人手不足の解消や若手の育成・成長につながることや、職場のダイバーシティ化を実現できること、条件を満たせば助成金を受けられることなどです。体力・健康面やデジタルへの対応力には不安があるものの、勤務体系を見直したり、研修制度を充実させたりすることで、シニア人材が活躍できる場を広げられます。経験豊富なシニア人材を雇用し、会社の成長につなげていきましょう。
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