業務委託契約とは?個人事業主へ仕事を委託する流れと契約書の書き方
事業を営む上で、状況に応じて個人事業主の人と仕事を行いたい、と考えたことのある人もいるでしょう。しかし、個人事業主と仕事を行うには業務委託契約の手続きが必要です。契約手続きなしで仕事を始めてしまうと、後になってから大きなトラブルに発展しかねません。
本記事では、業務委託契約について解説します。個人事業主を探す人も、自分が個人事業主である人も、お互いのために参考にして良い関係を築いてください。
目次
- 個人事業主の定義
- 会社員との違い
- 委任(準委任)契約
- 請負契約
- 1.業務内容や契約期間・報酬を決める
- 2.仕事の委託先を探す
- 3.契約書の原案作成・契約締結
- 業務内容
- 納期・契約期間
- 報酬内容
- 秘密保持
- 著作権・知的財産権の帰属
- 再委託
- 契約解除条件
業務委託契約とは
業務委託契約とは、法人が仕事の一部(業務)を個人事業主に任せ(委託)、報酬を支払うという契約です。
報酬を支払い、支払われる関係ではありますが、立場として法人と個人事業主は対等なビジネスパートナーです。法人が個人事業主を雇っているわけではありません。
一方、通常の社員やパート・アルバイトで就業される方は、法人と雇用契約を交わし雇われている立場です。そのため、個人事業主とは法人との法的関係性が異なります。
個人事業主の定義
業務委託契約は、業務を受ける個人事業主(受任者)と法人の間で締結しますが、個人事業主とは定義上、以下の条件を満たした人を指しています。
【個人事業主の定義】
- 税務署に開業届を提出している
- 個人で継続して事業を行っている
もし仕事を頼みたいと思っている相手が開業届を出していなければ、その人は「個人事業主」ではありません。
なお、フリーランスは特定の団体に属さないという働き方の名称です。そのため、個人事業主がフリーランスに該当するかどうかは、各個人がどのような働き方をしているかで異なります。
また、自営業者は自ら独立して事業を行っている人です。個人事業主とフリーランスだけでなく、自社の経営者も該当します。
会社員との違い
個人事業主と通常の会社員・従業員は、法人から見て以下のような違いがあります。
【個人事業主と会社員・従業員の違い】
個人事業主 | 会社員・従業員 | |
---|---|---|
会社(法人)との関係 |
|
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取り交わす契約 | 業務委託契約 | 雇用契約 |
一般的に会社が負う義務 |
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簡単にいうと、仕事や働き方に対して自由度が高く、社会的な保証が乏しいのが個人事業主。対して社会保証が手厚く、働き方の自由度が低いのが会社員です。
上記の表からわかる通り、会社は会社員・従業員に対してさまざまな義務を負っています。そのような負担を軽減する手段のひとつが、個人事業主と契約を結び業務委託を行う方法です。
ただし会社員と異なって、個人事業主は自分でビジネスパートナーを選べる立場にあります。そのため、条件が悪いと感じられたり仕事がしづらいと思われたりした場合は、契約を断られることがあります。
業務委託の種類
業務委託契約は、厳密にいうと以下の2種類に分かれています。
【業務委託契約の種類】
- 委任(準委任)契約
- 請負契約
それぞれのおおまかな違いや特徴は下記のとおりです。
【種類別業務委託契約の特徴】
委任(準委任)契約 | 請負契約 | |
---|---|---|
受ける仕事 |
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|
報酬の対象 |
|
|
受任者の再委託について |
|
|
結果に対する責任 |
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|
職業の例 | 受付、コールセンター、弁護士、医師など | 警備員、清掃員、ライター、プログラマーなど |
業務委託契約を交わす際は、どちらに当てはまるのかしっかり確認することが大切です。
委任(準委任)契約
委任契約とは業務委託契約のうち、成果物の生じない仕事に対して締結する契約です。
たとえばコールセンターの業務は、電話に出て応対することそのものが仕事であり、応対という行為に対し報酬が支払われます。そのため、業務に対する誠実な態度や過程が重要となります。
一方で、成果物に対し責任を負わないことも特徴です。コールセンターで応対した結果、新規案件の獲得に至らなかったとしても、応対した者の責任とは言えません。
なお、委任契約と準委任契約の違いは、業務内容が法律行為であるかどうかです。弁護士など法律行為を業務とする場合は委任契約、受付業務など法律行為でない場合は準委任契約となります。
請負契約
請負契約とは委任契約と異なり、成果物の生じる仕事に対して締結する契約です。
例えばプログラマーがWebサイトの作成を依頼されると、報酬の対象は提出するサイトです。サイトを作る過程には報酬が発生しないため、提出物を仕上げるまでの方法や態度は問われません。
ただし、成果物に対しての責任を負うことも請負契約の特徴です。上記の例で言うとサイトを作れなかった場合に当てはまりますが、そのようなときは無償で修正を行ったり、損害賠償を払ったりすることになります。
個人事業主へ仕事を委託する流れ
個人事業主に仕事を委託する流れに決まりはありませんが、一般的に重要となるのは以下の3つのステップです。
【個人事業主に仕事を委託するまでの流れ】
- 業務内容や契約期間・報酬を決める
- 仕事の委託先を探す
- 契約書の原案作成・契約締結
おおまかには、あらかじめ契約内容をある程度固めて、具体的な委託先の人を探します。委託先が見つかったら細かい条件を詰めて、最終的に契約するというイメージです。
1.業務内容や契約期間・報酬を決める
業務委託契約にあたって、まずは業務内容や契約期間、報酬などを決めておきましょう。
業務内容に関してはあいまいに決めず、細かい所まで決めることが重要です。たとえばWebサイトの作成を依頼したい場合、作成だけで良いのかメンテナンスも任せたいのかで委託先が変わってきます。依頼したい業務の範囲を洗い出ししつつ、内容を決定してください。
また、報酬に関しては特にトラブルになるケースが多いため、注意が必要です。消費税は含まれるのか、支払いのタイミングはいつかなど、細かいところまできっちり決めておくことが後で揉めないコツです。
2.仕事の委託先を探す
契約内容をある程度固めたら、具体的な委託先を探します。
探す方法について、特に決まりはありません。自力では難しいと判断した場合、クラウドソーシングやエージェントなど、仲介を行ってくれるサービスを利用するのもひとつの手です。他にも求人サイトに登録したり、自社のWebサイトに委託先募集の旨を掲載したりといった方法があります。
3.契約書の原案作成・契約締結
委託先が見つかったら、仕上げとして契約条件を詰めていきます。
お互いに希望や都合があるため、すり合わせの際は譲れるポイントと譲れないポイントを整理した上で交渉してください。
前述しましたが、特に報酬の面に関しては慎重さが要求されます。相手が何も言い出さなかったとしても、自主的に条件面の要望を出してお互いに確認しましょう。
業務委託契約書の書き方
業務委託契約書は、契約内容を書面で表したものです。記載内容に法的な決まりはありませんが、一般的には以下の項目を忘れずに織り込んでおくのがおすすめです。
【業務委託契約書の重要項目】
- 業務内容
- 納期・契約期間
- 報酬内容
- 秘密保持
- 著作権・知的財産権の帰属
- 再委託
- 契約解除条件
上記の項目以外にも、必要な項目があれば忘れずに追加し、契約書を作成しましょう。
業務内容
契約書には業務内容を記載しておきましょう。請負契約か委任(準委任)契約かも明記してください。
ポイントは行って欲しいメインの業務だけでなく、付随して発生する業務についても考えておくことです。契約書に記載されていない業務をなし崩しに任せる行為は、契約違反です。「書いていないがこれもやってくれるだろう」という発想は止め、どの業務を任せるのかきちんと線引きしましょう。
納期・契約期間
納期や契約期間も契約書に書くべき重要な項目です。お互いのスケジュールに関わることであるため、忘れず記載しておきましょう。また、更新を想定している場合は更新時期も併せて記載してください。
報酬内容
報酬内容は特に注意が必要な項目です。具体的な金額だけでなく、税や各種諸費用の負担を誰が行うのかという責任者確認、支払い方法、支払い期限なども、漏らさず織り込んでください。
報酬内容の項目に抜けがあると、後になって大きなトラブルに発展しかねません。優先的に確認し、ミスの無いようにしましょう。
秘密保持
秘密保持に関する内容も記載すべきポイントです。
秘密保持とは、簡単に言うと業務上のことを第三者に漏洩しないという約束のことです。「記載するまでもなく当然のことだ」と捉える人もいますが、契約書に記載がなければ法的に秘密保持の義務はありません。きちんと明記しておきましょう。
著作権・知的財産権の帰属
著作権、知的財産権の帰属に関することも記載しておきましょう。
著作権、知的財産権の帰属とは、成果物のやり取りが発生した際、成果物の所有権がどちら側のものになるかを決めておくということです。主に請負契約において重要となります。
一般的には発注側に権利があるケースが多いですが、受注側に権利がある事例もあります。著作権に関して揉める事例は後を絶たないため、お互いに条件を確認して契約を締結してください。
再委託
再委託に関してもトラブルの元となりやすいため、きちんと明記してください。再委託とは言い換えると外注のことであり、受託者が他所の協力会社などに業務をさらに委託する行為のことです。
一般的に請負契約は、成果物があれば過程は問われないため、再委託可能である場合が多いです。ただし、委託者の許可は取っておきましょう。
一方で委任(準委任)契約は、原則再委託できません。委託者は受任者本人の能力を信頼して契約しているますが、再委託すると業務に信頼できない他人が関わることになってしまうためです。
契約解除条件
契約解除条件も漏らさず記載が必要です。
契約解除条件とは、その行為を行ってしまうと、契約期間中であっても強制的に契約解除となる条件のことです。当てはまると議論することなく、一方的に契約を打ち切ることが可能になります。
また、違約金などについても併せて記載しておくのがおすすめです。
まとめ
業務委託とは法人と個人事業主がともに仕事を行うことであり、業務委託契約とは仕事をスムーズに仕上げるために書面上の手続きを行うことです。
重要なことはお互いにwin-winの関係を築く姿勢であり、相手に対して丁寧な態度で臨まなければ仕事は上手くいきません。業務委託や業務委託契約という形は、あくまでお互いにより良い関係を築くためのものです。
業務委託について知識を深め、契約を整えてトラブルを未然に防ぎましょう。そして、本来の目的である満足のいく仕事を目指してください。
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